【空へ】
□first contact
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校舎を囲む桜の木はひとしきり花を咲かせきり、やわらかそうな緑の葉に模様替えを始めている。
俺はそんな季節の変わり目の美しさを横目に、野郎3人と中学に入学して間もなく触れる話題に没頭していた。
そう
“部活はどこに入るか"
「トウヤは背ぇデカイから、どこでもよくね?」
左側に居た奴が俺を小突きながらテキトーなことを言った。
「いーよなー、その背なら即レギュラーだぜ?楽勝だよなあ!」
右側に居た奴もそれに賛同する。
俺自身どこでもいいと思っていたから、そんな軽口は気にしたことではないが、背がデカイだけで楽勝だなんて思われるのは、あまりいい気がしない。
「そーかぁ? そんなら、お裁縫部にしようかしらぁ?アタシの背を活かせると思うのぉ♪」
・・・まぁ、いつもの俺はこんな感じで不快感を切り抜ける。
処世術と言えば大げさだが、まわりも爆笑しているし、こういう感じに味をしめているのも確かだ。
それにしても、俺の部活選びは難航を極めた。
小学生の時はミニバスに少年サッカー、水泳、書道、珠算、と、ほぼ毎日のように何かをしていたので、これといった拘りもない。
いつもつるんでいる奴らは、野球だ、サッカーだ、とある程度の目星はつけているらしい。
別に焦る訳ではないが、部活見学の期間を待たずに俺は1週間早く“独り部活見学"と決め込むことにした。