短編

□【四万打記念】味付きエネルゴン製作の協力者
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 アニメを見ていた時から声がおっさんくさいなぁとは思っていたけれど、
 まさか味覚までおっさん系だとは思わなかったよ。










「お前が『味』に興味を持っていたなんて意外だな」
「そうかー?」
 エネルゴンに味を付ける。その発想を最初に話した時、理解はしなかったものの一番強い興味を示したのは意外なことにサンダークラッカーだった。聞けば、他のデストロンと違って破壊やら戦闘やらにそこまで興味の無い彼はこの星の生物を観察するのが趣味で、その時に人間が口にするものの多様さに興味を抱いていたらしい。
 私とサンダークラッカーがいるのはエネルギーの密度や安定率を調整させるための道具を散乱させたままの私の部屋だ。このエネルギー研究の材料も、機材を動かすためのエネルギーも、実は私の分のエネルギーを使っている。だから最近私は慢性的に若干エネルギー不足なわけだけど、美味しくも無いものを無理に摂取するよりはいいかな、と思って気にしない。
 私の分のエネルギーで作った試作品の味つき固形エネルゴンのにおいをかいでそっとサンダークラッカーが囓る。もぐ、とそれを口に含んだ彼の感想を聞くためにデータ記録用のパネルを立ち上げながら、私は彼の方を振り向いた。
「だって、お前は何に対しても関心が薄そうだし」
「それは否定しねぇけど…退屈だから人間を見てたら気になっただけだ」
「そっか。で、それどうだ?」
 つい、とサンダークラッカーの指の間に半分残ったエネルゴンを指して聞いてみる。サンダークラッカーは残りの半分を口に含むとぽりぽりという音を立てながら噛み砕いて答えた。
「舌にべたって残る感じ、ちょっと気持ち悪い」
「全部喰ってから気持ち悪いって言うのかよ」
「でも『食感』はすごい好きだ。固いけどかみ砕きやすいのがすごくいい。これはなんていう『味』なんだ?」
「それは『甘い』。一応チョコレート味ってやつだ」
「ふーん」
 サンダークラッカーに渡したのは、人間の板チョコのかけらを摸倣したものである。私が食べてそう判断しただけだけどな。どうやら彼の味覚には合わなかったらしい。
「失敗作か…」
「いや、俺は好きじゃ無いだけで、他に気に入る奴はいるかもしれないぜ」
「そうか。じゃあとっとくか。
 んんと、そうだな…『甘い』が苦手なら、こっちはどうだ?」
 私は少し思案して、デスクの上に並べた皿のうちの一つをサンダークラッカーに差し出した。私達の親指の第一関節くらいまでの大きさの固形エネルギーのかけらが山になっている。
 サンダークラッカーの濃い灰色の指先がかけらをつまむ。先程と同じようにくん、とエネルギーのにおいを嗅ぎ、指先につまんだ半分をそっと囓る。
「………」
 ぽり、ぽりぽり、ぽり、という音がサンダークラッカーの口の中から聞こえてくる。視線を指先に投げ、集中して『味』を分析する彼の顔の真剣さに思わず緊張してパネルを持つ手に力がこもる。
「ど…どう、だ?」
 咀嚼を終え、嚥下したサンダークラッカーに静かに聞いてみる。すると彼は驚きの表情を浮かべて顔を上げた。
「これすごくうめぇ!」
「そうか!」
 どうやら当たりだったらしい。残り半分も口に放り込み、今度は嬉しそうにぽりぽり食べる彼にこっちまで笑顔になる。残りも喰うか?ともう一度皿を差し出してみたら、皿を抱えて幸せそうに食べ始めた。
「これはなんて『味』だ?」
「これは『塩辛い』ってやつだ。人間が酒と一緒に食べるのをよく好む味だよ」
「『酒』かぁ。確かにエネルギーのつまみにはいいかもなぁ」
(おっさんだ…)
 この固形エネルゴンの味のイメージは、実を言うと「柿の種」である。ポテチ味を作ろうしたら失敗してできあがったとも言う。ポテチを作ろうとして失敗すると柿の種になるって結構面白いよね。面白くないか。ごめん。
「そんなに気に入ったのか」
「おう。あ、でもこれだけ喰ってたら飽きるかも」
「そりゃそうだ。それに味を付けるためにエネルギーバランスをいじっているからそれ単体で食べても十分なエネルギーにはならないぞ」
「まじかよ。じゃあ完全に嗜好品ってことになるのか?」
「いや、そうでもない。合わせて逆のエネルギー配分のものを取れば体内でエネルギーバランスが調整されて良い感じになる」
 まるで人間の食事でいう五大栄養素の調整のようだ。そんなことを思いつつ答えると、サンダークラッカーはよく分かっていなさそうな顔で「すげーな」と言いつつ、ぽりぽりと塩辛エネルゴンをつまみ続けた。

 結局味付きエネルゴンのサンプルを完成させた時にサンダークラッカーに協力感謝分として渡したエネルゴンが塩辛い味だったことは、言うまでもない。






(了)

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40000hitリクエスト『サンクラ相手』で『エネルゴンに味をつける話』でした!サンクラはリフレクターと一緒にたまに人間観察というか地球観察とかしてそうなイメージがあります。

以下拍手返信

こんにちは、はじめまして、ミヤさん。お祝いのお言葉ありがとう御座います!短くなってしまったのですが、リクエストして頂いたシチュにこだわってみました。
これからも当サイトにお越し頂ければ嬉しいです。萌えの続く限りがんばります!それでは。

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