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□どうやったって
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ー分かってたつもりだった。
どうやったって、私はアイツには勝てない。アイツは世界が必要としている存在だから。




『おはよう、小椋』

「あ、おはよう怜奈ちゃん!」

私は、いつも通り、アイツー小椋ーに接する。貼り付けた笑顔で。私のE遺伝子はマリー.アントワネット。相手を美貌で騙すことは簡単なことだった。でも、私の渾身の演技を、一瞬で壊した人物がいた。小椋のすぐ後ろに。

「よぉ、怜奈」

『ーっ、おはよう、アダム』

アダム、コードネームは"ジャック"。かつてイギリスを恐怖で怯えあがらせた伝説の殺人鬼、切り裂きジャックのE遺伝子を持つ男。私は、アダムに淡い恋心を抱いていた。そう、昨日までは。

『朝、一緒なんだ』

私は、小椋を軽く睨みつける。

「う、うん///」

一緒、に反応したのだろう。小椋はアダムの方を見ると、顏を少し紅潮させた。

ームカつく。

『そっか。じゃあ邪魔者は退散しよっかな♪』

私は2人に向かって微笑むと、背を向けた。

「そ、そんな!怜奈ちゃんも、一緒に行こうよ!朝ごはん、まだなんでしょ?」

小椋は私に笑顔を向ける。曇り一つない、笑顔を。

『大丈夫、今日はお腹空いてなくてさ。今日は非番だし、お腹空いたら食べるよ。そんじゃね』

「そっか、分かった。じゃあね、怜奈ちゃん」

『そんじゃね、小椋、アダム』

「おう、体調わりぃなら無理すんなよ」

ーやめてよ。

『うん、ありがと。』

2人は歩いてゆく。あぁ、もう。なんでかなぁ...。そんなに優しく接しないでほしい。期待してしまうから。

『っ...なんでよ』

私は昨日の夜、眠れなかった。ガリ子のお見舞いにみんなで来て、そのあと2人が部屋を出てったのをを見て私はそっとあとをつけた。すると、2人はキスしていた。それが、アダムから、だ。私は思った。あぁ、終わったな、と。ここに来て少しのアイツにアダムを奪われるのは嫌だった。

私は自室に帰ると、泣いた。

『私のほうが...っ、先に出会ってたのに、ずっと、好きだったのに。なんで、どうして...っ!』

私は元々、ここにはいなかった。私がまだ幼稚園生だった時に、私の街に進化侵略体が現れた。周りでたくさんの大人たちが殺されて、私はもう死ぬしかないと思った。私の目の前には、つい2分前までは一緒に笑いあっていた両親が転がっていた。心臓は動かずに。私は侵略体に自ら寄った。すると相手はこちらへ大きな口を開いてやってきた。私は覚悟を決めて、目を、閉じた。ーだが、来ると思っていた衝撃は来なかった。私が恐る恐る目を開けると、目の前には大きなナイフでその怪物を斬った人物がいたからだ。そして、彼は振り向いた。

《こっち来い!》

それだけ言うと、私の腕を掴んで走り出した。でも私は恐怖でいっぱいだったため、走ることが出来なかった。すると彼は私を軽々と、抱き上げた。

《しっかり掴まっとけよ!》

その時感じた温もりは、今だに記憶にしっかりと、焼き付いている。


そして私はDOGOOに引き取られ、ずっとこの歳までここで生きてきた。

《アダム!!見て見て!ジェスと作ったんだ!》

《おーすげぇじゃねぇか!頑張ったな》

アダムは、まだ小さかった私を率先して育ててくれた、兄のような存在だった。だが、私の中ではいつしか好意が芽生えていた。それは、家族愛のようなものではなく、恋愛対象として、だった。

『私...っ努力足りなかったのかな』

アダムの助けになりたくて、私は特訓に励み、自分の中に眠る"マリー.アントワネット"のE遺伝子を見つけた。そして特訓を積み重ね、第二小隊に所属することが出来た。戦闘では前線にアダムと共に立ち、仲間たちの手助けをした。

ーずっとこのままでいれたらいいのに。

だが、そんな幸せはそう長く続かなかった。
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