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□第1話
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チリリリリンッ
「んー・・・。」
目覚ましが俺の耳を刺激する。手を伸ばし、枕元の時計にまだ覚めきっていない目を向ける。
「まだ6時・・・」
まだ寝たい気持ちはあるが、カーテンの隙間から漏れる朝日によって、消えてしまった睡魔。
「・・・起きるか。」
まぁ、いい。その分、朝から水を感じられる時間が増えるだけだ。水着を持ち、風呂場に向かう。そこで俺は聞こえてしまった。彼女の、
――俺の妹の啜り泣く声を。
『りん、凛くん・・・っ会いたいよっ・・・!!』
それは、俺の親友(ライバル)の名だった。普段、怜奈は泣く姿は見せない。常に笑顔で、俺たちを和ませてくれた。俺が水泳を辞めた時も、凛を傷つけてしまった時も、決まって笑顔で、"大丈夫だって!!"と、言ってくれた。今度は俺の番だ。あの笑顔を守るためなら・・・俺はなんだってしよう。
コンコン
『っ!!』
「・・・入るぞ」
『ちょっ!?だ、駄目っ!!』
ガチャ
「・・・怜奈。」
彼女はその綺麗な碧い瞳を赤い充血で染め、瞳を潤ませていた。
『いいって言ってない・・・っ!』
「悪い・・・。泣いてただろ、大丈夫か?」
『〜っ!!』
「・・・相談なら乗る。だから・・・泣くな」
ぎゅっ
『ハルちゃん・・ありがとう』
朝日に紛れて見えたのは、彼女の笑顔だった。