短編(片想い編)

□Chu(ヘソン)
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先に眠ってしまったエリックのキレイな唇を見ながら
僕は遠い日を思い出していた

あの頃の僕は自分の想いを悟られないように
エリックを必要以上に避けていた

あの日楽屋でエリックの執拗なポッポの嵐が
逃げることを諦めて虚ろな目をした
エンディの顔中に浴びせられていた

エリックはたまに僕にもポッポしようとすることはあったけど
本当にすることは絶対になかったし
僕も全力で逃げていた

エンディが羨ましいと思っていたときミヌが叫んだ

エリック!
ヘソンもポッポして欲しいってよ!

勘のいいミヌの一言にエリックが動いてきた

またいつものようにフリだけだとわかっていても
僕の心臓は壊れたみたいに動きだした

よし!次はヘソンだ!
近付いてくるエリックの顔を
本当は見ていたいけど目を逸らした

いつものように逃げようとした瞬間
いつの間にか後ろに立ってニヤニヤしていたジニのせいで
僕はバランスを崩して前に倒れた

そして加減することを知らないドンワンに押されたエリックは
勢いよく僕の方へ飛んできた

抱き合うようにぶつかった僕たち

これでもポッポしないなんて
お前たち本当に水と油なんだな

ドンワンにそう言われて
慌ててエリックから離れたけど・・

エリックの首筋に触れた唇が
日焼けした肌のように
熱くてヒリヒリしていた

ほんの一瞬の短いChuは
誰にも気付かれなかった
エリック以外には・・

真っ赤になったエリックは
凝った首をほぐすように首を動かしながら
僕の唇が触れた辺りをそっと指でなぞって
その指で自分の唇に触れた

本当のキスよりもドキドキする間接キス
僕は倒れてしまいそうだった

トイレ!
楽屋から逃げ出そうとした僕に
俺も!
エリックがついてきた

廊下でエリックが呟く

俺ずっとしたかったんだ
すぐ行けよトイレぐらい
パボ違うよ
ヘソンと・・キ・・

まさかエリックも僕と同じ気持ちだったなんて
あの頃は想像もできなかったから
からかわれるのが怖くて
僕は走って楽屋に戻ってしまった・・

あの時逃げなきゃよかった
うぅん・・どうした・・
ゴメン起こした?

エリックは返事をしないで僕を抱きしめた
僕の前髪にエリックの唇が触れている

やっぱり逃げてよかった
あの時キスしてたら
僕間違いなく気絶して
大騒ぎになってたもん

そう思いながらエリックの首筋にそっとキスをした

あの時みたいに唇はヒリヒリしなかったけど
あの時と同じぐらいドキドキしながら
僕はエリックの胸に甘えた

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