長い夢の魔法。
□15。
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次の日から、私は必ず誰かと行動することを義務づけられた。
「いいか、絶対一人で行動するなよ?」
「シリウス、それさっきから何回も聞いたわよ?」
「再確認だ再確認」
あと……と、言葉を濁す。私はまだマダムポンフリーの言いつけで医務室で今日一日は休養中のためここは医務室での会話になるため、自然と声は小さくなる。
「あれだ、ハロウィンパーティー、レギュラスと踊るのか?」
ドキリ、今度は私が言葉を濁す番だった。
「誘われては、いるんだけど…」
「迷ってるんだな?」
「えぇ…」
そういえば、彼はいつもの笑みを浮かべてなら俺が愚弟からさらってやるよ。と、得意気に笑った。楽しそうに、ニヤリと。
「見とけよ、最高のショーになる」
あぁそうだった、彼は悪戯仕掛人だった。ハロウィンなんて絶好の悪戯日和じゃない。私の表情が緩んでいく。
「楽しみに、してるわ」
レギュラス君には悪いかもしれないけど、最高のショーというものが楽しみで仕方ない。私はいつからこんな子になったのかしらね。以前なら我関せずを決め込んでいたのに。
「Mr.ブラック!もう寮に戻りなさい!!」
突然、マダムポンフリーがシャッ!とカーテンを開けて鬼のような形相で言った。
「へーい」
それじゃあまた来る、と微笑んだ彼に手を振り返してマダムポンフリーに促されベッドに潜った。
「あなたも大変ね、あんなヤンチャ坊主が恋人だなんて」
「あっ、恋人とかじゃなくて…!」
ただの許嫁なんですという言葉は、照れなくていいのよという上品なマダムポンフリーの笑みに書き消された。
「ほら、もう顔真っ赤にして可愛いわねぇ」
マダムポンフリーは恋愛話が好きみたいだと、新発見。
私達、そういう関係に見えるのかな…なんて考えているとたしかに顔が熱くなってくる。
ドキドキと懐かしいような感覚。
これはいつだったか…まだ小さかった頃に1度あった感覚。
あぁ…、初めて彼に会った日かもしれない…ー。
甘くて、心地よいそれといつもより少し早い鼓動。まるで、恋してるみたいだとぼんやり思ったりして。あれ?私…――。
そのまま意識は沈んで眠りに落ちた。