長い夢の魔法。
□7つ。
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図書室はとても心地いい。
古い紙の香りや、静かな空間がざわついた心を沈めてくれるようだからだ。
さすがに休日のしかもまだ太陽が高くないうちに図書室を訪れる人は数えられるほどで、中にスリザリン生や知り合いがいないことを確認してこっそりとマグルについて記されている本を手に取った。
そして人目のつかない本棚の影で、それなりに重量感のある本を開いた。
そこには、母上や使用人たちでは教えてくれないようなマグルの生活や世界が綴られている。
それを小脇に抱え、もう一冊は宿題にあった変身術のレポートを書くために役立ちそうな本を一冊を借りた。
【マグルの生活とその実態】と書かれた古びた本を撫でて、早く部屋で読みふけりたいと図書室を出たとき。
「いっ…!」
バタバタと慌てて走り込んできた生徒と派手にぶつかり尻餅をついて本をばらまいてしまった。
慌てて近くに落ちた変身術に関する本を拾い上げ、ぶつかった生徒さんが拾ってくれたマグルに関する本を受けとる。
「あ、ありがとうございまし、た…っ!?」
お礼を言おうと視線をあげたとき、そこにいたのはあのシリウス・ブラックさん。
「大丈夫か、その……***…」
「あ、はい。大丈夫です……」
吸い込まれるような灰色。マグルが作ったビー玉のような眼。
数年前と重なるその瞳。
「突然悪ぃな、俺はお前に用があってきた。今時間平気か?」
は、はい。と考えるまでもなく答えは口から滑り出てきた。
彼は数年前の男の子なのだろうか、それともただ単に瞳の似たグリフィンドール生なのだろうか。
深紅と深緑。異質な色が並んでホグワーツの廊下を歩いていく。