壁の外、あなたと共に。
□訓練兵時代
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「ミカサー、立体起動のアレについてなんだけどちょっといい?」
と、アバウトな前ふりをしながら友人のミカサ・アッカーマーに近づく。
立体起動装置の扱いは彼女の右に出るものは同期にはいないだろう。少なくとも私は知らない。
「なに?」
そういって黒髪を揺らして振り返ったミカサは今日も相変わらず綺麗でジャンが惚れるのも無理ないと思う。
「アンカーの発射がイマチ…、こー…バシュッ!!って勢いがないの。」
「……トリガーをもっと強く引いてみたら?あとは整備の問題か…」
少し考えるそぶりを見せたミカサはそういうと、そういえば、と続けた。
「エレンが呼んでいた、対人格闘術の練習に付き合ってほしいそう」
……羨ましい。と小さく呟いたのは聞こえないふりをした。あー私はなにも聞いてませーん。
「わかった、アドバイスありがとう!」
「いいえ」
それだけ言うと、訓練場へと歩みを進める。
小走りぎみで訓練場へ向かうと、エレンが私の足音に気づいて大きく手を降っている。なんだあの清々しいほどの笑顔。なにかいいことでもあったのか。
「お待たせ!」
「おー!悪いな、せっかくの自由時間なのに」
「ううん、体は動かしてる方が楽しいしね!!」
それについては俺も同感だ、と笑った途端。
一瞬エレンの顔が強張った。
射抜くような鋭い視線は私の後ろを通り越しする。
その視線を追い振り替えると、綺麗な金髪をなびかせたアルミンが歩いてきていた。
「なんか用か?」
「ソフィアに対人格格闘術教えてもらおうと思って」
「残念だったなアルミン!今回は俺が先だ!」
ふふん!と勝ち誇ったような笑みを浮かべているがなにを争っているのか。なんて。
そんなこと、気づかないほど天然でも鈍感でもない。どこぞの少女漫画のヒロインじゃないんだから。
「そっかぁ…それは残念だったなぁ?」
「だから今回は諦めろ!」
「あー……、三人でやろ?そのほうが後々楽だし。アルミンもせっかく来てくれたし」
いつもでは感じられないような険悪なムードが立ち込めて、ひきつっているであろう笑顔でそういうと、笑顔になるアルミン。
アルミンのその笑顔に黒い影が含まれてるとか、エレンが舌打ちしたとか私は知らないからね。断じて気づいてないから。
(ここは、私のために争わないで!って言うべきなのか?)
(でもそんなこと言える人がいるなら私はぜひお目にかかりたい。)