壁の外、あなたと共に。
□これほどまでに儚い。
1ページ/1ページ
自室に設置された机で立体機動装置の整備をしている手を止めて、窓の外を見た。
明日はもう何度目になるかわからない壁外調査へと出る日だ。
はぁ、とため息をこぼしてまた作業を再開したころ。
コンコン、とノックがして返事を聞かずに入って来る。
そんな人、あの人しか居ないのだけれど。
「どうしたのですか兵長」
「明日は壁外調査だ」
「わかってますよ」
いつものしかめっ面で当たり前のことを言う兵長は、さらに眉間に皺を寄せた。
「お前は俺のそばにいろ」
「心配せずとも簡単には死にませんよ」
「…チッ、察しろ鈍感が」
ギロリ、その視線で人を射殺せるのではというほどの眼力で私を睨むも、とうに慣れた私はまだ気を引き締めたまま。
「壁外に私情を持ち込むのは危険です。
いつなにがあるかわからない、いつ死ぬかもわからない、それが当たり前。
兵長もわかっていらっしゃるでしょう?」
投げ掛けるように言って視線を手元に戻すと、グシャリと乱暴に頭を撫でられ髪が乱れた。
「なら、生きて帰って来い」
俺の元にな。と最後に付け足して、コツコツと足音を鳴らしながら部屋を出ていった。
上司命令が出たからには、無傷は無理でも自分の足で立って、兵長の元へ行かないとな、なんて。
緩む頬が、私の素直な心情を表しているようで。
「浮かれてちゃ死ぬぞ私」
パンパン、と両手で頬を叩いて気を引き締め直した。