夢.短編

□ふたりの温度
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街路樹の木々も色とりどりに色づき始めた11月。

陽が陰るのもだいぶ早くなり、なんだか少し物悲しい。

でも、そんな雰囲気も嫌いではないと思う。


誰もいない放課後の教室で暮れていく茜色に染まる空を眺めながら、彼を待つ時間はとても好きだった。





「お待たせしました。」

ハァと軽く息を弾ませながら、黒子くんは教室のドアを開ける。

私のために急いできてくれたんだな…と嬉しく感じる瞬間だ。

「ううん、大丈夫。部活、お疲れ様。」



教室でいつも静かに本を読んでいる黒子くんに、私から告白して付き合うようになりもうすぐ3ヶ月。

いつもは部活でなかなか一緒にいられないから、週に1度だけこうして彼の部活が終わるまで待って一緒に帰るようになった。




「陽がくれるのが早くなりましたね。もう真っ暗です。」

「ホントだね〜。これから寒くなるね…寒いの苦手だな。」

「僕も苦手です。」

黒子くんはそういいながら、寄り道したマジバで冷たいバニラシェイクを注文する。

私の手には温かいココア。


「だったら、シェイクをやめて温かいのにすれば良かったのに。」

「いえ…これだけはやめられません。」


あはは。へんなの。
そう笑う私に優しく微笑む。


物静かだな…と思っていた黒子くんは、仲良くなってくるととても頑固なところがある。

付き合ってみてはじめて知った。





お店のドアを開けると、彼はいつも私に先に出るように促してくれる。


車通りは少ない帰り道だけど、黒子くんはさりげなく車道側へ移動し、そのまま空いている私の手を握って歩き出す。


こういうところはとても男らしくてドキドキするところだ…






ドアを開けてくれる時とか、歩く時は必ず車道側へ移動してくれる時とか、手をつないでくれる時とか

私はいつも胸がドキドキして、同時にぽかぽか温かくなる。



遠くから見てるだけでは、知らなかった彼の意外な一面をこうして少しずつ知っていく。




もうすぐ私の家に着く。
あの角を右に曲がると近道だ。

そう思いながら、手をつないで角まで歩いて、2人同時に左に曲がる。


もう少し一緒にいたいね…
遠回りして帰ろうか…


同じ事を思っていたのかな。
顔を見合わせて笑い合う。




片想いしている時は恋って切なくて苦しいものだと思っていた。




2人でいると…

こんなにも優しくてあたたかい…









黒子っちと結婚するのが1番幸せになれそうだと思う。

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