古典書物〜刀剣〜


□サヨナラ愛の君へ
1ページ/3ページ

「先生!!3032号室の患者の容態が急変しました!」
「先生!酸素用意できました!」
「脈拍低下、電気用意します!!」



手術は成功したはず
なのになんで


「酸素入れます!」
「先生!」


看護医師が必死に彼女の乏しい命の光を照らし続けようとしている

(主…僕が絶対助けてあげるから…だから生きて…死なないで…)


点滴や脈拍計全ての確認
酸素濃度のチェック
あらゆる検査をして
容態の悪化原因を調べた

(何が原因なの…お願い主生きて…頑張って…)


看護医師達に囲まれベッドで今にも光が消えそうなのは僕の恋人

ホントはダメなんだけど
先生と患者っていう関係の恋
僕が一目惚れしちゃってこっそり担当にしてもらって口説いた相手

僕がこの病院に来た頃くらいに移り入ってきた重病患者さんで恋人としては1年くらいになる


その彼女が先日肺癌の敵失手術をして成功した
はずだった
なのに今その光は消えそうで…


「酸素上げて!!」
「心肺停止まで時間がありません!!」
「まさかのさん頑張ってください!」


だめだ…
行かないで…



(『みっちゃん…えへへ。どうしたの?元気ないね?』)

「え?」

(『あれ?どうしたの?……………!………もしかして私…死ぬの?…ねぇ…』)

「ダメ…まって…」




ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……………………………………………………




鳴り響く波数機



いつの間にか僕は彼女に電気ショックを当てていた…


(お願い…帰ってきて…行かないで…君を失いたくないよ)


(『みっちゃん…もういいよやめよ?』)


「ダメだよ諦めちゃ!」


(『ダメなんかじゃない…もぅ私死んじゃったんだもん………… 』)


彼には見えている
彼女の魂の姿が
そして声が聞こえている
でも諦めたくない認めたくない

周りの看護医師さんたちもまだわずかな希望を残し頑張っていた


「電気より心肺蘇生します」


「僕がするよ。」



そういい馬乗りになるように彼は彼女に心肺蘇生を始めた


傍には魂となった主の姿


(『みっちゃん…もぅやめて…私はもぅ帰れないの…』)


抜け殻となった自分に彼が必死に蘇生する
そんな姿を見て辛い


(お願い…主…帰ってきて…死んじゃダメだよ。また笑ってよ…笑顔を見せてよ…行かないで…行かないで…行かないで)



彼女の声はもう聞こえない…
世界が変わってしまった


(『…ごめん…ごめんね…もぅ………その世界に帰れないの……私の声はもぅ貴方に届かないの………もぅいいから…私から降りてよ…蘇生なんてもぅいいから…お願い…やめて…』)



「先生…もぅやめましょもう無理です…ここまで手は尽くされたんです。あとはもぅ寝かせてあげませんか」


看護医師さんたちもそう言い始めた


「……そうだ…よね。」
(主……助けられなくてごめんね……)


「10月31日午前0時01分まさかの主御臨終です………」


みんなは手を合わせた


「あれ?今日31日って主さん…この患者さんのお誕生日ですよね」

「ほんとだ、たしか19歳ですよね」

「なら後で僕、彼女にケーキ買ってくるから霊安室に供えといてあげて、保護者は彼女いないからご親戚の方来られたらまた少しのあいだよろしくおねがいね。」


それから僕は近くの洋菓子店に彼女が大好きなケーキを買いに行きご親戚が来るまで保管している霊安室に置いてもらった


「主寒くない?…ケーキ置いておくね。誕生日おめでとう………」



手を握ってあげると彼女はもう硬直し冷たかった


「今までよく頑張ったよね。抗癌剤とか…リハビリも痛かったよね。ホントは痛さで泣きたかったよね。今まで楽しめなかった分天国で楽しんでね。そして…生まれ変わったら今度は元気な女の子になって帰ってきてほしいな…そしたら休みの日どこか遊びに行こ…それまでさようなら…どうか安らかに眠ってください。じゃーね。」


そう言い残し僕は彼女を後にした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ