小説恋になるまで

□ずっともっと
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大地side


待ち合わせ場所にて美桜を待つ。
五分を過ぎたとこだが、美桜が遅刻なんて珍しくもなんともない。
遅いときは本当に遅いが、慣れたからどうってことない。

それより何で目的地が同じなのに現地集合なのかが謎だ。
ただメールにて一言、《神社の鳥居前集合》と送られてきただけ。

一人で待ってると周りの視線が嫌というほど突き刺さるから早く来てほしい。
話しかけられる前に早く来てほしい……………ってのは無理そうだ。


「あの、お兄さん!私たちと一緒に廻りません?」


ほらきた。女子二名。
もう本当に勘弁してほしい。
美桜がくる前にいなくなってほしいんだけど…


「………人を待ってるから」


そう言っても引いてくれないのはもうわかっている。ああ、鬱陶しい。
俺の安息の地はどこだよ……。

そんなことを何分したのか分からないが突然背中に重みがのし掛かり聞こえてきた声に驚いた。


「お待たせ、大地」

「………美桜」


ほら行くぞと手を引かれ足早にその場を去る。

いったい何年ぶりに手を引かれているのだろうか。懐かしい。

少し脇道に入ったところで美桜は立ち止まり手が離された。
離れたぬくもりに寂しさを感じるが今は目の前の不機嫌な彼の機嫌を直すことのほうが大切だ。


「美桜、助かった」

「感謝しろ」

「好きなもん買ってやるから機嫌なおせよ」

「……許す」


さっそく何か買おうと屋台の道に戻る美桜に着いていきながら先程のことを思い出す。

………後ろからのあれは可愛かった。
どこでそんなこと覚えてきたんだよと問いただしたいくらいだ。

そんな小さな幸せに浸っていた俺の意識を戻したのは幼なじみの不機嫌そうな声だった。


「おい大地、聞いてんのかよ」

「あ、わりぃ」

「俺といるのに他のこと考えてたわけですか」


へー、と言ってそっぽを向く横顔が可愛い。
てか何だ、その発言。


「お、お前のこと考えてたんだって」

「え?」

「あ……い、今のなしな!」

「え、あ、おい大地!」


危ない。
何恥ずかしいこと言ってんだ俺!!
あー、引かれたらどうすんだ。

内心焦っていた俺だか後ろから微かに聞こえた美桜の言葉に頬が緩むのが抑えられなかった。


「………………ほんと恥ずかしいやつ」


その声色は驚くほどテレていて。
何だよ期待するぞ。




そのあと美桜に散々買わされたりした俺たちは花火を見るために俺が見つけておいた少し離れた場所に来ていた。

そこにはやっぱり誰もいなくて。
立ち入り禁止の札を立てておいて正解だった。(使える力は使っておかねぇと)


それに、今日俺はあることを決めてきていた。

それは、もう一度しっかり美桜に告白をするってことだ。
あんな流れみたいな告白じゃなく。
そしてけじめをつけるんだ。

あの告白から1ヶ月は待ったし、生徒会役員にも転入生にも早く聞けよ(ヘタレ)って言われたし。

俺としてはまだ待ってもいいと思ってた。
ずっと幼馴染みだと思ってた、しかも男から告白されるだなんてそんな簡単に答えが出るわけがないんだ。

拒絶されても可笑しくないのに以前のままの関係でいられてるのは美桜のおかげだ。

……なんて今のままの関係でいられるならとか考えてるからヘタレだのなんだの言われるんだろうな。

せっかく役員にも転入生にも背中を押してもらったんだ。
ここでやらなきゃ本気でヘタレと言い続けられそうだ。


隣にいる美桜を横目で見てみるとぼーっとリンゴ飴を食べながら空を見上げていた。


それにしても浴衣が似合ってる。
不本意ながら母さんと姉貴のチョイスは完璧だ。
項がエロいなぁなんて頭に浮かんで慌てて頭を振れば怪訝そうな顔で美桜に見られた。


「…………どーした」

「な、なんでもねぇ」



しばらく二人でぼーっとしていると花火開始五分前のアナウンスが流れ出し、よし今しかないと口を開いた瞬間、俺と美桜の声が重なった。


大地side終
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