小説恋になるまで

□依存症
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吉野美桜side


誰かが話す声が聞こえる…


「んっ……」


目を開くと見えたのは白い天井。
そして消毒液の独特な匂いだ。

ああ、保健室か。
すぐ理解してとりあえず起き上がりベッドの回りのカーテンをゆっくりと開ける。

すると見えたのは泣きそうな吉岡とシノ、そして深刻そうな顔をした風紀のツートップがいた。
どうでもいいが、木村はそんな真面目な顔できたんだな。


「よ、」


よ?


「よじのざまああああああああ」
「よじのおおおおおおおおおお」

「うおっ」


勢いよく飛び込んできたシノと吉岡を何とか受け止め風紀の二人を見ると、しょうがないという顔をされた。

てか、吉岡のキャラが今日は恐ろしいほどに崩壊している。
それだけ心配をかけたということなんだろうが少し怖いな。

そんな保健室の空気は、戻ってきた保険医によって崩された。


「おー、吉野起きたかぁ」

「あー、はい」

「栄養失調と重度の寝不足。あとは喘息の発作な。」


黙ってそれに頷くとようやく落ち着いた吉岡とシノがすごい勢いで口を開いた。


「吉野様!!心配しました!!黒須様から連絡をいただいた時はこっちが倒れそうになりました
よ!!どれだけ僕の寿命を縮めれば気がすむのですか!!」

「何でいきなり倒れるんです!?心臓止まりましたよ!!焦って南雲に電話かけちゃいましたよ!!」

「あー、悪かっ、た?え?吉岡今何つった?」


南雲に電話かけたって大地?
え?は?何してんだ!?


「それなら何でもないと俺が南雲に言っておいたぞ」

「まじ黒須さんきゅ」


危ない。
大地になんか言えねーだろ。
黒須には後で礼をしねーと。


「そーだ、会長さん」

「なんだ、木村?」


ニコニコすんなウザい。
木村だから余計に腹立つ。


「会長さんに会いたいって奴がいるんだけど、どーします?」

「は?誰だよ」


吉岡とシノを見ると、さっと視線を反らされた。
なんなんだ、この二人。


「………わかった。通せ」

「わかった。待ってろ」


黒須は立ち上がり廊下にでてすぐに戻ってきた。
なんだよ、もう廊下で待たせていたのか。


「こいつらだ」

「は?三森と永峰?」

「かいちょー……」

「……かい、ちょ」


二人のその表情は言葉で表すなら「しゅんとしている…」が正しいだろう。


「あのね、かいちょーが運ばれてくの見てね、ふくかいちょーに話きいたんだ……」

「かいちょ、顔色、すご」


つまり、保健室に運ばれる俺を見て吉岡に話をきいた。
んで俺の顔色がすげー悪かったってことか?


「かいちょ、ごめんなさい」

「ごめ、ん、なさい…」


泣きそうな顔で頭を下げる二人。
そんな二人に近づき頭を上げさせた。


「謝るな。俺が自分の都合で突き放したんだからな。俺こそ悪かった」


ぽんぽんと頭を撫でてやれば泣き出す二人。
吉岡とシノといい、俺は泣かせてばかりだな。


「がいぢょー!ずぎぃー!!」

「お、れも…」

「あー、分かった分かった」


泣き止まない二人が落ち着くのを待ち、その日は全員で寮へと帰った。

明日からの仕事は少し楽になりそうだ、なんて思いながら自然と口元が緩んだ。



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