小説恋になるまで

□残るものは
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屋上にいくまでに何人かの生徒とすれ違ったが反応は様々だった。

役員を追い出したという俺の噂を信じてる奴。転入生を怪しいと思う奴。何を信じたらいいのかわからない奴。

大半はこの3つにわけられる。

まぁ俺が役員を追い出したってのは当たらずとも遠からずだが。
転入生に言われたとはいえ、それを実行したのは俺だ。

それに、今から大地にも同じことをしようとしている。
これで俺を信じる奴は減るだろう。


「どーにかなるか…」


屋上の扉を開けるとそこには青い空が広がっていてキリッと少し胃が痛んだ気がした。

少し影になっているところに回り込むと、大地が寝転がっていた。

柄にもなく緊張しているのか、手汗がひどい。


「………大地」

「んぁ?………ああ、美桜か。こんなとこくんの珍しーな」

「少し、話があってな…」

「話?」


小さく深呼吸をし手に力をこめる。
やれる。俺にできないことなんかねーんだ。

左の髪をくしゃっと掴みながら意を決して口を開く。


「ずっと言おうと思ってたんだが、俺、大地のこと嫌いだったんだわ。」

「は?」


眉間に皺を寄せる大地。
そりゃそうだわな。
いきなり嫌いだなんて言われたら誰でもその反応をする。


「一般家庭の俺なんかが大地といるとイジメもあったし、陰口なんか聞きあきた。」

「…………おい」

「うっとおしかったんだ。大地なんかいなくても俺は生活できるのに世話やいてくるし。」

「おい、美桜!」

「お前知ってるか?初等部の頃、お前のファンの差し金で俺が襲われかけたの。ああ、中等部でもあったっけか。お前といるとこんなんばっかりだ」


目を見開く大地にもう一押しだとさらに手に力を入れる。


「全部未遂だが、もう嫌なんだ。やってらんねーよ。役員も俺が追い出した。俺なんかに勝てねぇような奴等はいらねぇってな。大地、お前もだ…」


そこで言葉を止める。
さっきまで何か言いたげにしていた大地は今はもうそんな様子も見受けられなかった。

屋上に静寂な時が訪れる。

何か、言えよバカ。
「そうか」の一言でいいから…

そう思っていると大地が口を開いた。


「……わかった。悪かったな、今まで。」


そう言って背を向け、屋上から出ていこうとする大地にまた胃がキリッと少し痛んだ。

振り返るな。情けない顔してる俺なんかみないでそのまま行け。


「じゃあな、………吉野」


去り際に大地が呟いた俺の名字は、どんな言葉より俺を悲しくさせた。

だが、それほどのことを俺は大地に言った。自業自得ってやつだ。
しょうがない…。


「しょーがない、か」


そうやって割りきるしかねーんだ、今の俺は。


何だか力が抜けてその場にしゃがみこみ、しばらく動けなかった。



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