小説恋になるまで
□依存症
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副会長である吉岡が戻り、これで仕事も少しは楽になるかと思った美桜だったが体育祭の書類が増え全く仕事量は変わらなかった。
美桜の眉間の皺はよりいっそう深まるばかりだ。
しかも体調は頗る悪い。
気分は最悪だった。
「……し………しの……吉野!!」
「…あ?なんだ?」
「何回も呼んだのに気がつかないなんて本当に大丈夫ですか…?」
吉岡の目には心配の色が濃く写っている。
自分も寝不足な癖にと返そうと思った美桜だったが、吉岡に大丈夫だと一言だけ返す。
「それよりそろそろお前仮眠してこいよ」
「いえ。吉野のほうが寝ていないんですから私は大丈夫です」
「いいから寝てこい。これは命令だ」
「………わかりました。」
渋々仮眠室へと向かう吉岡を見送り再び書類へと視線を戻す。
目薬も自分でさせなかった美桜は目の霞が酷くなってから自分で目薬が出来るようになった。
吉岡には冷たい目で見られるがそこは気にしていないようだ。
今日はやけに視界が霞んで、さらには頭痛が酷い。
眉間の皺もいつもの数倍だ。
「怠い……」
小さく呟いた言葉と苦しそうな咳は誰に聞こえるでもなく、生徒会室の静寂に溶け込んでいった。
*
何時間経っただろうか。
美桜が時計を見ると短い針は6を指していた。
軽く三時間は経ったようだ。
その時、仮眠室からバタバタと慌ただしい音が聞こえ、そのすぐ後に吉岡が慌てて出てきた。
「よ、吉野!!」
「んだよ、んな慌てごほっ……」
慌ててどうした、と言う言葉は咳で言えなくなった。
騒がれると頭に響くようで美桜はこめかみを押さえた。
そのまま吉岡を見ると怒ってるのか悲しいのか何とも言えない顔をしていた。
「なんだよ、その顔は」
「だ、だって吉野が起こしてくれないからこんなに寝てしまったじゃないですか!!」
珍しく喚きながら「しかも吉野の顔色が死人よりも悪いんですもん!」と騒ぐためこっちが驚く。
「とりあえず落ち着け。俺は生きてる」
「そんな知ってますよ!物の例えです!と、とりあえず保健医ですね!!咳もしてるし!」
頭が割れるように痛い。
美桜は吉岡の声がだんだん遠くに感じるのが分かった。
「よ、吉野?!」
咳が止まらなくて息苦しいのか精一杯息をしようとする。
「げほっげほっ……だいじょ、だから…けほっ……おちっ、つけ…」
美桜は泣きそうな吉岡の声を聞きながら立っていられなくなりずるずると崩れ落ちた。
そしてすぐに意識をおとした。
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