小説恋になるまで

□心地よさは
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突然だが俺は現在進行形で現状についていけていない。

まず、この転入生は何を言っているのか誰か教えてくれ。


「俺、かいちょーさんのこと嫌いなんだよ」


いやいや、二回繰り返さなくても聞こえてるって。
てかお前とは初対面なはずなんだけど…………ああ、やっぱ見覚えがない。


「俺が欲しいもの全部持ってるあんたが大っ嫌いなんだ。」


は?欲しいものって……?
言っておくが俺は金なんぞないからな。一般家庭だし。
つか誰だよ。こいつがめっちゃいい奴なんて言ったの。
こいつすげー性格わりぃじゃん。


「俺にはお前のほうが色々と持ってるように見えるぞ」

「いや。あんたが持ってて俺は持ってないものあるだろ」


少し考えればわかると思うんだけど、と呆れた顔で言う転入生に俺の眉間に皺が寄る。


「………………わかんねぇ」

「はぁ?!南雲大地!俺はあいつが好きなんだよ!」

「…………………は?」


目の前で顔を真っ赤にして怒る転入生に開いた口が塞がらない。
だって大地のこと好きって…。
それに大地は、


「別に俺のじゃないっつーの」


うん、間違ってない。
そもそも大地はモノじゃねーから。

転入生は怒
りが落ち着いてきたのか俺との距離を少しだけ縮めてきた。
やっぱ瞳が綺麗だな、なんて場違いなことを思ったり。


「南雲大地をあんたから引き剥がして俺のにしたい。ついでに生徒会役員も引き剥がしてやんよ」

「はぁ…」


何言ってんの、こいつ。
まぁ、大地が簡単にこいつに靡(なび)くとも思えない。
あいつら(役員)はどうだかわかんねぇけどな……。


「会計と書記はチョロいな。でさ、あんた副会長を突き放してよ」

「は?」

「副会長は何だかんだあんたのこと尊敬しちゃってるみたいだからさ。一言いって突き放して、自分で」


なんだ。
この無能、とか言えばいいわけ?
てか吉岡は俺のこと尊敬なんかしてねーだろ。(普段の態度からして)


「何でお前の言いなりになんなきゃいけねーわけ?」

「ははっ。かいちょーさん分かってないね」

「なんだよ」

「俺は理事長の甥だよ。それに会長より財力はある」


はっ!まさか、こいつ…


「さぁ、どーする?断るならかいちょーさんの家族がいる会社潰してあげてもいいし、南雲先輩の家族に手を出してもいいよ」


こいつ…っ。
南雲家はそんな簡単に潰されはしないけど、圧力ってか揺さぶ
りをかけられたら少しはグラグラするかもしれない。
それに俺の家族には面倒をかけたくない。
よって俺には選択肢が1つしかないわけか。


「……………………」

「ほら、早く」


このガキッ!!!
いつか殺したる!!


「……………やればいいんだろ」


俺がそう言えば笑顔になる転入生。



「頭のいい人は嫌いじゃないですよ。じゃあ会長、よろしくお願いしますね」


背を向けて去っていく転入生を見ながらこれからのことを考えていた俺は、このやり取りを誰かが見ていたことに気がつかなかった。



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