シリーズもの

□タナトフィリア
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物心ついた頃から美しいものが好きだった。
何よりそれを眺めるのが好きだった。
だからいろいろなものをコレクションしてきた。
アクセサリー、コスメ、写真、時には石でさえも…。
自分が美しいと思ったものは全て手に入れたい。
いつしかそう思うようになった。
そして、終いには自分ももっと美しくなりたいと思うようになり…。
それで今に至るわけだ。
そんな私が今夢中なもの。
それが赤司征十郎。
彼は部活の後輩で、主将で。
何より、征ちゃんは美しい。
私が今まで出会ってきた誰よりも、何よりも、圧倒的に美しい。
頭のてっぺんから爪の先まで、全て。
征ちゃんは、この世で一番美しい。
私は征ちゃんが、欲しい。
「怜央。」
彼は姿だけじゃなく、声だって美しい。
「見てるか?」
彼は姿、声だけじゃなく、行動も、全てが美しい。
「ちゃんと見てるわよ。」
全部、見てる。
あなたのことなら、いつだって見てる。
征ちゃんが私だけに見せてくれる姿。
私はその全てを目に焼き付けている。
征ちゃんの細くて白くて美しい、その手首から赤い液体が流れ出す。
彼は、体液だって美しい。汗も、血も。
「良かった。今日はもっといけそうなんだ。見ててくれ。」
乱れた呼吸でそう言う。
艶やかな肌は汗で濡れ、宝石のような2色の瞳は虚ろである。
右手で持ったナイフを、自分の首に当てる。
それはちゃんと頸動脈を当てている。
私はその姿を見て胸が高鳴った。
その白い首が赤く染まるところが見たい。
なんて美しいのだろう。
征ちゃんは、自分を美しく魅せる術を知っている。
そして、私を虜にする。
じわじわと右手に力を入れているのがわかる。
それに比例して赤が滲み出す。
征ちゃんの口の端が美しく、ゆっくり上がる。
「征ちゃんの、もっと美しいところを見せて?」
私が頼むと、彼はゆっくり頷いた。
そしてナイフを両手で持ち変える。
そのまま、一気に下へ、引き下ろす。
その直前、彼は一言呟いた。


床に横たわる美しい美しい征ちゃんに近寄る。
赤い海で眠る、その姿。
私が愛した、その姿。
そっと彼を抱きかかえると、耳元で囁いた。
「私も愛してる。ずっと、ずっと。」

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