短編集(裏)

□ブリリアント
1ページ/1ページ

ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
ずっと待ち望んだ音だ。
時刻は午前2時を回った。
それでもずっと、待っていた。
急いで玄関に駆け寄り鍵を開ける。
ドアを開けた瞬間、愛しい赤色が飛び込んできた。
「赤司っち…ってうわ!」
ずっと待ち望んだその人はビショビショで。
確かに今雨が降っているけど、なんで傘差してこなかったんだろうか。
よりにもよって、この人が。
兎にも角にも、はやく拭かなきゃ。
「赤司っち、早く中入って?」
そう言って手を掴むが、彼は一向に動かない。
「ねえ、どうしたの?」
ずっと俯いたままの顔を覗き込もうとすると、そのまま口付けされた。
珍しい。
赤司っちから、求めてくれるなんて。
激しいキスとは裏腹に、冷静にそんなことを考えていた。
それから、こんなことをしている場合ではないと気付く。
隙を見て唇を離した。
「本当どうしたんスか?それより、早く中に入って拭かないと…」
「涼太、涼太…。」
思いっきり抱きしめられて、身動きがとれない。
本当に、今日の赤司っちはどうしたのだろう。
何があったのか。
そんなこと、想像も出来ない。
必死に思考を巡らすが思い付かなかった。
ただ、彼にかかっていた雨が服を濡らして、とても冷たいと感じていた。
風邪を引かれては困る。愛しい君だからこそ。
「ねえ赤司っち。早く拭かないと風邪引くッスよ?」
そう言うと、ようやく離してくれたと思ったら今度はその場にしゃがみ込んで。
雨に濡れたその綺麗な赤を真上から見下ろす。
とそのとき、カチャカチャと金属音が鳴り響いた。
一瞬訳がわからなかったが、すぐに状況を理解する。
「え、待って、赤司っち、ちょっと。」
言ってもその手を止めてくれない。
本当にどうしたのだろうと、今日何度目かの疑問が頭の中を埋める。
そうして混乱しているうちにも、赤司っちは慣れた手つきで俺のズボンを下ろした。
同時にパンツの中から、キスで既に半勃ちしたソレを取り出す。
そして、小さなその口で咥え込む。
上から眺めるその光景はまさしく絶景であった。
大好きな人が自分の自身を一生懸命フェラしている。
思わず胸が高鳴る。
それに比例して高まる射精感。
裏筋を舌で舐められ、思わずイきそうになったのを必死で堪えた。
そして赤司っちの頭を掴んでその口から自身を引き抜く。
「な、何してるんスか!」
「お前こそ、なんでやめるんだ。イけばよかったじゃないか。」
そうしたいのはやまやまだけど、俺は恋人のことを大事にしてるからーとは言わなかった。
「とりあえず、拭いて、着替えて、ベッドに行って、それからッスよ?」
「そんなに我慢できないだろ。僕も、お前も。」
事実なだけに何も言えないでいると、赤司っちは俺を押し倒した。
「入れる。」
たった一言、それだけ言って、俺の上に跨る。
「ちょ待って!まだ解してないし、俺ローションとってくるから!つか、早く中入んないと…」
「嫌だ待てない。」
どれだけわがままお嬢様だよ。
呆れてため息を吐く。
こうなったら、最後の反撃。
「言っとくけど、俺は手を貸さないッスからね。ヤらないッスよ。」
これなら入れられないし、大丈夫だろう…と安心したのはほんの一瞬で。
「じゃあ、いい。自分で、やる。」
え?
またもや混乱。
すると赤司っちは左手を後ろに回し、自分の後孔を弄りだした。
そして右手で自身のソレに手を添える。
俺に跨って、立て膝をついて。
所謂、オナニーというやつ。
いきなりの状況に頭がついて来れない。
ただ呆然と、目の前の光景を見つめていた。
先から流れる先走りがテラテラと右手を伝う。
くちゅくちゅといやらしい音が玄関に響く。
赤面で、恥ずかしそうに俯きながら、小さく喘ぐ。
もう頭がパンクしそうだった。
自分はどうすればいいか何もわからず、ただただ息をする暇もなくその状況を凝視していた。
「りょ、た…。ぅ、ぁ…もっ、と、見て…?」
こんなに淫らな赤司っちは初めて見た。
多分、後にも先にも今しか見れない気がした。
だから言われた通りよく見た。
止めるのも忘れて、自分の頬を蒸気させながら、ただただ見つめていた。
「ふぁ…も、いっかな…ん、りょうた、入れ、ても、い?」
俺は何も考えず無意識のうちに頷いていた。
それを見て赤司っちは小さく口角を上げた。
「んん…は、っぁ、ん、大丈夫…。」
いつもみたいにすんなり入った。
俺の上で腰を落としながら赤司っちは綺麗に笑った。
毛先から雫が滴り落ちる。
顔も体中も濡れていて、それは雨だけではなくほんのり汗の匂いがした。
本当に、綺麗だと思った。
俺にはいつだって、赤司っちが輝いて見える。
バカみたいに、キラキラと。
「はぁ…動くよ。」
そう言った赤司っちを無視して、俺は下から突き上げた。
その細い腰を掴んで、何度も、何度も。
赤司っちは何度も俺の名前を呼んだ。
俺の名前を呼びながら、喘ぎながら、愛してると言った。
後で思えば初めてのことだった。
もっと、ちゃんと聞いておけばよかった。
ただ、そのとき俺は、この美しい愛しい恋人を、もっと壊したいとしか考えていなかった。


後で聞いた話。
雨が降ってきたから傘を買おうとした赤司っちはコンビニに寄った。
そこで、週刊誌に俺とある女優の熱愛報道が載っているのを見た。
今まで、赤司っちのこともあって、俺はかなりスキャンダルには気をつけてきた。迂闊だった。
つまりこんなことは初めてだったわけで、赤司っちはかなり驚いたらしい。と同時に、不安だの怒りだのが込み上げてきて。
そのまま傘を買うのも忘れて走り出したということらしい。
今思えば随分感情的であった、と赤司っちは言う。
俺も、それに関しては根も葉もない嘘だということで解決したということを伝えた。
赤司っちは安心したような顔をした。
恋人を不安にさせた俺も悪いし、ごめん許して?とおでこにキスをした。
赤司っちは、笑って言った。
「仕方ない。許してやるよ。」
それから俺は、愛してるよ、と今度は唇にキスを落とした。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ