長編

□あの日の彼。5
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その日は部活どころではなかった。
とにかくそわそわしていて、早く終わらないかなーとずっと考えていた。
そうしているうちにようやく終わり、俺は一番に部室を駆け出した。
約束の時間には余裕で間に合う。
先に家に帰ってシャワー浴びて支度して…って、本当に間に合うだろうか。
俺は家まで走って帰った。


案の定、時間には間に合わなかった。
といっても10分ほど。
でも相手はあの赤司君だし、すごく怒られるだろうなーと、怯えながら待ち合わせ場所に向かった。
着いた途端一目で分かってしまう彼の存在。
綺麗だし、存在感ハンパないし、道行く人も横目で見ているわけだ。
「あ、赤司君。ごめん遅れて。」
俺が後ろから話しかけると振り返った赤司君は不機嫌な顔で言った。
「遅い。心配したじゃないか。僕との約束に遅れるなんていい度胸だな。」
…後ろに鋏がちらついてるよ。
必死に謝ると、まあ部活だったしね、と理解してくれた。
それにしても、心配してくれたことがすごく嬉しかった。
「どこ行くんだ?」
と聞く赤司君のために、下調べ済みな俺は目的地へと歩き出した。
後で気づかされたことだが、無意識のうちにその手を取っていたらしい。
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