長編

□あの日の彼。1
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WC決勝戦。
全てが終わって、その時の彼の顔を見たとき。
俺は思い出した。
ああ、そうだ。
あの日の彼だ。


あれは確か中学2年の頃。
出掛けた先で出会った。
レジに並んだとき、丁度俺の前にいたのだ。
会計の途中でお金を落としてしまい、俺が拾うのを手伝った。
「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
目が合った。
すごく綺麗な瞳だったことを今でも覚えている。
真紅の瞳、髪。
背丈もそんな変わらないのに童顔なところとか。
すごく魅力的な人だと思った。
出会ったと言ってもこの一瞬だけである。
でもそれが俺にとってはすごく印象的だった。
また、何処かで会えたらと、そのときは思ったものだ。


WCの始まる前。
彼に会ったとき、俺は気づかなかった。
あまりにもあの時と雰囲気が違っていた。
更にトラウマとなりつつあるあの行動。
どれを取っても、あの日の彼だとは思えなかったのだ。
それが今。
試合が終わって、彼が見せた笑顔。
柔らかなその笑みを見て、俺は全てを思い出した。
そうだ。
あの日の彼こそ。


赤司征十郎。

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