短編集(赤司受け)

□始まりを愛しい君と
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『外に出てみて。』
赤司君からの突然のメールだった。
明日が何の日かは赤司君も、もちろん俺もよく知ってる。
だからこそ、まさか、とは思いながら急いで階段を駆け下りた。
ガチャ。
ドアを開ける。
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「誕生日おめでとう。光樹。」
「赤司君…!」
まさか、夢、いや、え、本当、うそ、そんな、まじで…。
頭の中がパニックに陥る。
誕生日おめでとう。
そうだ。そう言われた。だから、えっと。
「ありがと赤司君。」
愛しい恋人をぎゅっと抱きしめる。
ああ、俺って、幸せ者だな。
「寒いでしょ。中に入って?」
赤司君の手を引いて中に入る。
その手はとても冷たかった。
「いつから外にいたの?」
「終電で来たから…。そんなには待ってないかな。」
「早く言ってくれれば中に入れたのに。」
「それじゃつまらないだろ。12時ぴったりにおめでとうと驚かせたかったんだ。」
にっこりと笑う赤司君。
敵わないな。
「それで…プレゼントなんだけど。見つからなくて。だから今日探しに行こう。」
「え、ちょ待って!今日平日!学校だよ?」
「僕はもう休むと連絡してきた。」
ああそうだ赤司君ってちょっとバカだったんだ。
そこが可愛いんだけど。
「それじゃダメだよ。部活だって、迷惑がかかる。俺のことはいいからちゃんと学校行って?」
何度か説得して、ようやく頷いてくれた。
「それじゃあプレゼント…どうしよう。」
俺のためにそこまで考えてくれてるなんて嬉しすぎる。
「プレゼントならもうもらったよ。赤司君が会いに来てくれたこととかね。」
それでもどうやら不服そうで。
じゃあ、と俺が切り出す。
「赤司君からキスしてよ。」
笑ってそう言うと、バカか、と顔を真っ赤にする。
赤司君可愛い。
「ね。プレゼントでしょ?お願い!」
暫くして小さく頷くのが見えた。
「じゃあ、今からキ、キスするから。目瞑ってて。」
言われた通り目を瞑る。
本当はあまり好きじゃない。
顔真っ赤にしてる赤司君を近くで見ていたいから。
でも赤司君の頼みなら仕方ない。
目を瞑って暫く経ったけど何も起きない。
不安になって薄く目を開けたら赤司君も目をぎゅっと瞑って頑張っているような感じだった。
待ち切れなくて結局自分から唇を重ねた。
「光樹…!」
「ありがとう。気持ちだけ受け取っとくよ。また今度よろしくね。」
そう言った次の瞬間。
唇に何かが触れた。
理解が一歩遅れてやってきて、赤司君にキスされたのだとわかった。
「君に先にされてしまったのがしゃくだっただけだ。」
そっぽを向いて言う赤司君。
その背中に抱きつく。
「ありがとう。大好き。」
「僕も…好きだよ。」


また始まる俺にとっての新しい一年の始まりを、君と一緒に過ごせるなんて。
プレゼントなんかいらないから。ただ願うならいつも側にいてほしい。
ただ、それだけ。それが全て。

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