短編集(赤司受け)

□おかえりと君と
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「ただいま〜。」
「おかえり。」
家に帰ると征のおかえり、という声が聞こえる。
玄関でいつも待っててくれる。
小さいけれど、大事な大事な幸せ。
それを噛み締めながら征に抱きついた。
「ごめんね。今日も遅くなっちゃって。」
「いいよ。こうして君の帰りを待っている時間も好きだからね。」
そんなことは嘘だと知っている。
本当は、不安で不安で泣きそうなことも。
君のことなら何でも知ってるんだよ。
もう一度ごめんね、と呟くと軽くおでこにキスをした。
それから靴を脱いで家に上がる。
「ご飯は食べてきた?」
「ううん。征と食べたかったから。」
「そうか。すぐ準備するよ。」
パタパタと走っていく征の後ろ姿を見つめる。
一緒に暮らせるって決まったときはすごく嬉しかったのを今でも覚えてる。
最初の頃はまだちょっとぎこちなくて。
最近ようやく慣れてきて、家に帰ると征がいることが当たり前になってきている。
でも、この日常はとてもかけがえのないもので。
だから、俺はこの大切さを、幸せを忘れないようにしている。
「できたよ。」
「今行く。」
家に帰れば君がいること。
家に帰れば君がおかえりと言ってくれること。
こうして2人でご飯が食べれること。
「征。」
「何?」
「いつもありがとう。」
征は少し照れ臭そうに、こちらこそ、と言った。
大好きな人と同じ時間を共有できる幸せ。
神様、ありがとう。
明日は少し早めに帰って来よう。
それで、征におかえりって言ってあげよう。

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