短編集(赤司受け)

□所有印
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「マーク、付けて。」
初めて肌を重ねたあの日、僕は自分から光樹にお願いした。
わかりやすく顔を真っ赤に染めた光樹はビクビクしながらも、薄いけれどきちんと跡を残してくれた。
あの時の光樹はまだ可愛かったなあ。
なんて思いながら横にいる愛しの恋人を見る。
「征?どした?」
「別に。」
2年で人はここまで変われるのか。
僕に怯えていたあの頃の面影は一切無い。
なんだかつまらない。
「ほら、こっち来て。」
あの頃からずっとそう。
行為を終えた後、僕は必ず光樹に跡を付けてもらう。
僕は光樹の物だという証拠だ。
これが無いと、君のいない京都で不安になるのだ。
僕たちはなかなか会えないから、会う度に付けてもらっている。
もちろん僕だって、光樹に付けているけれど。
「っふう…。はい終わり。」
跡付けもだいぶ上手くなった。
憎たらしい奴め。
「もうすぐ受験だね。」
「ああ。」
「そしたら卒業だね。」
「ああ。」
「そしたら…。」
隣でチラチラと僕の方を見ながら光樹は言った。
「卒業したら、一緒に暮らそうよ。」
……。
顔を真っ赤にしている愛しの恋人を見た。
やっぱり君は、変わってないかもね。
「いいよ。」
「そ、そんで!!」
僕が返事をすると、それを待っていたかのように間髪入れずに光樹が言った。
「そしたら、所有印は左手の薬指に付けるから。そしたら、征はずっと俺の物だから…。」
おどおどしながらまくし立てて、最後に笑って言った。
「だから、安心してね。」
僕は笑い返した。
「頭が高いぞ。」
「あはは。」
なーんてね、って、軽くキスをした。
所有印が、早く左手の薬指に付きますように。

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