「にゃんこ、急におとなしくなったねぇ、どうしたの?」


どうしたもこうしたもあるか


我の濡れた毛を、手拭いよりも厚みのある柔らかい布で拭いてくるこの女

頭はしっとりと我と同じように濡れていて、毛先からぽたぽたと垂れる滴が鼻先に当たって不快だ。
そればかりかこの女は、男である我と…なんの躊躇いもなく湯浴みをしはじめたのだ

顔を背けようとしてもかような小さき体では、視界の端に嫌がおうでも女人の裸体がちらつき、気が気ではなかった

腫れ物に触るかのように全身を洗われて、はりつめていた神経に気疲れをしてしまったのだ


「にゃんこー、おーい。やっぱにゃんこはお水が嫌いなのかにゃ?」
「(妙なしゃべり方をするな。気色悪い)」
「お、やっと喋ったね。にゃーにゃー」
「(やめと言うておろうに!)」
「ちゃんとお返事してくれちゃって。君は優しいね」
「(優しくなどないわ!)」
「ふあー、ねむ。君も寝ようか。どうしよっかな。段ボールにタオルケットでベット作ってあげる」

『だんぼーる』も『たおるけっと』も知らぬが、畜生扱いされている事はすぐに理解した

予想通り、何か木箱(にしては軽そうな)のようなものに布を敷き詰めていた


「(フン。そんなもので寝られるか)」
「ありゃ?にゃんこは普通のベッドがいいの?」


布団が敷いてある寝台の上に飛び乗ると、女はきょとんとした間抜け面をして我を見た


「(当たり前よ。)」
「君は案外なつっこいんだね」
「(何?戯言…を?!)」
「もうちょっと寄りなさいよ寝れないでしょ」
「(何故貴様まで入ってくる!)」
「ベッドは一個しかないから一緒にしか寝れませんよー。ほら端にいく!」
「(男と床を共にするなど!貴様は遊女か!恥を知れ!)」
「うるさいよ、はやくねなさい」



ぬくもり猫肌
(明日早いから寝てくれよ)
(くっ!!)




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拍手連載第3話






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