長編

□勘違いと発見
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『…リアルな夢だったな今の』

チチチと鳴く雀の声を聴いて私は瞼を持ち上げた。








幸村とのティータイム中、佐助さんが音もなく背後に現れて、私と幸村の耳たぶを引っ掴んで上田城まで連れて行かれたのは昨日の出来事だった。

私の歓迎会をする!と鼻息荒く豪語した幸村に根負けした猿飛さんは、女中さんにてきぱきと指示を出して料理の準備や会場のセッティングをして、そのあまりの手際の良さに現役サービス業の私はひどく感心したのだった

先輩って呼んでもいいですか猿飛先輩と詰め寄ると、よ…呼びたきゃ呼んでもいいんじゃない?と鼻を赤くしながらまんざらでもない様子の返答が来たので
『すげえっす先輩!マジかっけぇっす!』とじゃれついたら白けた顔をされた。

慶次も交えての大宴会が始まって、皆飲むわ食うわの大騒ぎ
上田の兵士さんともちゃっかり仲良くなった私は宴会芸と称してフラダンスを踊って見せたらこれがバカ受けだった

ただ一人幸村を除いて

破廉恥でござるううううう!!!と私を皆の前から引きはがしてぐっと脇に抱えられた
その姿に女中さんも兵士の人も目を真ん丸にして驚き、歓喜の声を上げた
慶次も酒が入っているからか、ひゅうと口笛を吹いて野次に混ざり『いいね、春だね!』とはやし立てた

対しての猿飛さんは信じられないといった風に口をぱくぱくさせて、この中の誰よりも驚いているようだった
『旦那…俺様…俺様…』とうわごとのように繰り返す猿飛さんは壊れかけのレディオというたとえがぴったりだった


『ごんべ!他の男も居るのだ!みだりに腰を振るものではない!』
『ご、ごめんあはは』


といった会話をすれば、さらに宴会場は黄色い歓声に包まれた
若が!幸村様が!女性を呼び捨てに!嫉妬心をあらわに!と言ったような内容だったと思う(私もお酒が入っていたからあまり覚えていない)


『とにかくその甘えたような表情も金輪際ほかの男には見せるでないぞ!』
『は…はあい…』


適当に返事をすると満足したように幸村はそのまま倒れこんだ。
飲みすぎて意識を失ったらしい
お酒が入っているのに大きな声を上げるから…

私を抱え込んだまま倒れたので、傍から見ればそれは彼が私を押し倒したように見えたのかもしれない

さらにどよめき色めき立つこの部屋の中で、正常な判断ができるものなど他に誰もいなかった





『…なんかめちゃくちゃ酒臭いんだけど…』
起き上がろうとしたが何やら重い
とてつもなく重い


…この現象は前にもあったな…


首だけを左側にもたげると、そこには幸せそうな顔をして眠る超絶酔っ払いパフォーマンスを見せてくれた幸村がいたのだった


『……古今東西!』
『うおおおおおおおおお?!』


とりあえず慶次の時と同じように
両目を潰しにかかった



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