長編

□雷撃救出劇
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この間の盗賊軍団とは違う。もう少しだけだが身なりがしゃんとしていて、持っている刀も歯こぼれはしていない

その事から俺は瞬時に状況を理解した。
こいつらはあちこちで盗みを働いているかなりの手練れだと


『(汚れまくって異臭放つほどになるまでには金に困ってないってか…)』


大方小さな農村だけに的を絞って大人数で盗みを働くのだろう
女や酒は売れば金になる


「(屑野郎ども…!)」
「おっと兄ちゃん、動くなよ?」


刃先を三芳の頬に押し当てる頭と見られる男はずるりと舌舐めずりをして俺をねめつける

人質を取られてしまえば俺はもう動けない
加えて刀は部屋の中だ

こいつらが俺をひとしきり殴って満足するとは思えない
どうしたらいい、万事休すか…?!

頬を汗が伝う。今ここで三芳が死んだらどうなる?
村の皆、三芳の両親
そしてごんべちゃんがそれを見たら…!


『(考えろ!考えろ!考えろ!)』

「んー?なんだ。変な格好した女が一匹いるじゃねえか」


その言葉に、ぐちゃぐちゃになる思考はさらに掻き乱される
この場で変わった格好をした女なんて、たった一人しかいないじゃないか


「ほぉ!よくみりゃあそこそこ器量良しと来たもんだ。あいつはまずいただきだな」
「駄目だ!!!」
「あぁ?」

思わず大きな声を上げてしまった。それが気に入らなかったのか、男は三芳に押し当てる刃先に力を込めた

つう、と赤い血が三芳の頬を伝う。三芳の母親の悲鳴が背中越しに聞こえた


「黙れよ兄ちゃん。あんたに拒否権はねぇよ」
「くっ…!」
「やめて!その子に手は出さないで!」


ごんべちゃんの綺麗な声が悲痛に叫んだ。

その声音に気分を良くした男は三芳への刀を一瞬離して、口許に笑みを携えたままごんべちゃんをじろりと見た

ごんべちゃんに背を向けているため、どんな顔をしているかは解らない。

不安だろう。怖くてたまらないだろう

あんな思いをしてからまだ7日しか経っていないのに、こんな絶体絶命な状況に追い込まれて

三芳を助けることも、ごんべちゃんを守ることもできない位置にいる自分が歯がゆくてたまらなかった

「おい」
「へえ」


男の一人が刀を構えながらゆっくりと俺の横を通りすぎた
やめろ!ごんべちゃんに触れるな!近づくな!


「…私が行く。だからその子を離してあげて。この村からでていって」

「ごんべちゃん!」
「どうします?」
「その女一人で高く付きそうだ。いい。連れてこい」


絶望の息使いを聴いた
村人は皆、為す術もなくただ震えているのみだった

男に刀を突きつけられながら歩くごんべちゃんが俺の横を通りすがる

今手を伸ばせば、この男を殴り飛ばしてごんべちゃんを助け出すことはできるだろう


だけどその瞬間、三芳はきっと殺される

指一本動かせないままごんべちゃんは頭の前に立たされた
乱暴に顎を持ち上げられて、品定めをされている

ごんべちゃんの瞳の色が空の色であることにもまた気をよくした男は乱暴に三芳をこちらへ投げ飛ばした


「あぐっ!」
「三芳!」

「さあていい拾いモンをした。感謝するぜ?ガキ」

ごんべちゃんを背後から羽交い締めにするように抱き抱える男をきつく睨んだ



その時ひどい違和感を感じた



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