novel/しょーと

□Day Dream
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屋上の手すりをひゅるりとすり抜けた風がオレのゆるく結ばれたネクタイを揺らした。
それはパタパタと左右に振れたかと思えばすぐに顔に落ちてきた。
顔からネクタイを剥がしてあくびをひとつすれば雲がゆったりと目の前を流れる。
屋上へ続く階段からバタバタと可愛くない足音が聞こえてきたからオレは慌てて眼を瞑った。
だってきっとこれから面倒くさい話が始まるんだ。あーあ。













Day Dream














「ジロー!」

ギィと嫌な音をたてて開いた屋上のドアからユウの声が聞こえた。

「もー、また寝てるの?」

オレのからだにユウの影が重なって暗くなる。

「たいへんなの!早く起きてよ!!」

横っ腹を軽く蹴られて思わずぐえっと変な声が出た。乱暴者。

「・・・なにー。」

今起きましたー、かのように振る舞えば目の前の真っ赤な顔をしたユウがオレの顔をのぞく。

「すきなひと!できた!」

「・・・ふーん。」

じゃあおやすみ、とまた体を冷たいコンクリートに預けようとしたら、
今度は肩をゆさゆさ揺さぶられた。もーーーーホントに嫌だ。

「ジローと同じテニス部なんだから協力してよ!」

「はあ?」

オレの目が久しぶりに覚めた気がする。こんなの試合以外はじめてかもしんない。

「ふふふ、宍戸君!かーっこいいよねー!」

「てかこれで何人目だC」

ユウはすぐ人を好きになる。
ちっちぇーころから知ってるけどこれがまたうまくいかないやつばっかり好きになる。
振られてはまた次、また次、だからユウがオレを探してる時は大体こんな話。
安心して話してくるんだろうけど、一人で盛り上がってるからテンションがついていけない。
オレのきちょーな時間をユウがいつももってっちゃうんだ。

「うるさい!今日部活あるんでしょ?見に行くから!」

「かってにすればぁ」

「あんたを見に行くんじゃないの!」

ベーッとユウは思いっきり舌を出した。
むかつくからユウのオデコにデコピンしてやろ。

「いた!!ばか!」

「ばかって言った方がばかだC−」

ユウがオデコを抑えたらチャイムが鳴って仕方なしに立ち上がる。

「んじゃ、またあとで。」

「5時限目寝ちゃダメだよー!」

誰が寝かせてくれなかったんだか。オレはまたひとつあくびをした。
















部活の時間になってホントにユウがきた。
めっちゃこっちに手振ってるけどシカトしよ。

「おい、ジロー、あれなんやねん。」

おしたりがめんどくさそうに聞いてくる。

「オレの・・・」

ん?オレの?なんだ?友達・・よりもっと深くて、でも親友ってわけじゃなくて
家族・・・幼馴染・・・そんな軽くなくて・・・

「おーい、どないしてん」

「しらね。宍戸のこと好きなんだってー」

コートに向かうけどなんかやる気起きないC。
でも真面目にやらないとまた跡部にほっぺつねられるんだー。
あー、でもごめん、跡部。オレ、気づいちゃったんだ。

















ユウの事すき、って























「お疲れ、ジロー!」

「・・・・・・・」

帰り道、ユウが後ろからついてきた。まあ、家が近いから仕方ないんだけど。

「宍戸くん、やっぱかっこよかったなぁ。テニスもうまいし!」

「あのさー、ユウ。」

「ん?」

「宍戸、かのじょいるよ」

「え”!?」

見てこのユウの間抜け顔。誰か写メ撮ってアップしてよ。

ユウの間抜け顔がみるみる青ざめて、それから真っ赤になってオレに怒ってきた。

「知ってたなら早く言ってよ!」

「だってユウ、めっちゃ一人で騒いでるC・・」

「もう!ばかみたいじゃない!」

「オレ、宍戸よりテニスつよいよ。」

ユウはホントにうまくいかないやつばっか好きになる。
彼女もちとか、女の子と付き合うとか考えられないやつとか。

「だから、なによ。」

口をむうっと尖がらせてまだ怒ってる。

「ユウ、へんなかお。」

笑えばユウは更に怒った。

オレにすればいいのに。
言いかけてやめた。
テニスもっと頑張って一番つよくなったら、今度はオレの番でしょ。
つねられたほっぺをさすった。










おわり
...

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