次の日、ちょっと寝不足気味だけど準備は万端! このまま何事もなく授業を終えて跡部んちに行って‥と思うとニヤニヤしてしまう。 後ろの席の宍戸に激キモとか言われて椅子を蹴られたけど今日の私はそんな事では怒らないのですよ。 「あーと、べ‥」 放課後いつもなら迎えに来てくれるのになかなか来ない跡部を探したら廊下にいた。 横には愛実ちゃん。 「景ちゃん、お誕生日おめでとう。」 跡部は少しめんどくさそうに、でも嬉さを隠せずにそれを受け取る。 大丈夫、大丈夫。彼女の余裕。 「あ!ユウちゃん!今、景ちゃんにお誕生日プレゼント渡そうと思ってたとこなんだ!一緒に見て見て?」 私を見つけ、ふふっと可愛らしく笑う愛実ちゃんは、じゃーんと小さな袋から編み目が少し雑なミサンガを取り出す。 「愛実がね?つくったの!へへ、どう?」 氷帝のカラー、青、白、黒で編み上げられたそれは跡部の腕に巻かれていく。 身につけてもらえるものが気に入らなかったらと思うと怖くて踏み出せなかった私と違って、本当に彼女はいとも容易く入り込んでくるなぁ。 うん、大丈夫、大丈夫‥ 彼女の余裕‥ 手を後ろにして強く自分の手首を掴む。 何か強い刺激を与えていないと、ちょっと挫けてしまいそうだ。 あと一歩2人へ近付けない私が距離を縮めようとして踏み出そうとすると横から後ろからキャアキャアと騒ぐ女子たちに揉まれた。 『跡部様お誕生日おめでとうございます!!』 『跡部くんプレゼント受け取って!!』 『跡部様〜!!』 「ちょ、痛っ」 『跡部様!!』 あれよあれよと言う間に女子たちが跡部に群がり私はどんどんと後ろに。 ふと跡部と目があうと、昇降口で待ってろと言われた。 ふぅ、と一息ついてスカートの裾を払う。 やっぱり跡部はすごいな、と自分の彼氏の偉大さを呪った。 私の鞄に潜むプレゼントが早く出してと言ってる様にチラチラと顔を覗かす。 ごめんね、相手はまだ来ないよ。 それから5分後にその相手が来て、待機してた送迎車に揺られた跡部は持ちきれない程のプレゼントに少し疲れた顔をみせた。 「跡部、改めて言うのもなんか照れくさいけど、誕生日‥おめでとう。」 「ああ、ありがとよ。」 跡部の部屋に入ってソファーに座ってから一呼吸置いて目の前の彼にそう伝えた。跡部がふわっと笑うとこっちも嬉しい。 私が考えた跡部へのプレゼントはテニス部のみんなが映ったアルバム。ハンドクラフトに少し自信のあった私は合宿や大会、普段の練習の写真を1つのアルバムに纏めた。 跡部の部屋に最初に入った時になんだかもの寂しい気がしていたからピッタリだと思ったんだ。 「気に入らなかったら、ごめんね?」 「んな訳あるかよ。バーカ。」 パラ、パラとゆっくりアルバムを捲る跡部の目がとても優しい。 「ッハ!この忍足の顔、傑作だな!」 「ははは!この時がっくんが飛びすぎて忍足に落ちたんだよね!あ、こっちの宍戸はまだ髪長いね。」 「‥‥懐かしいな。」 「うん‥‥‥‥。」 それ以上はもうあまり会話もなくて、重なった手がどちらともなくお互いを求める。 忍足の言うとおりになったのはなんだか癪だけど文字通り私がプレゼントになった。 あの時、痛みを和らげる為に跡部の腕に巻かれたミサンガを噛みちぎれば良かった、なんて少し後悔してる。 |