novel/しょーと

□予習復習は完璧に
1ページ/1ページ

















予習復習は完璧に



















木手くんからの宿題の答えを彼に伝えてから
お互い同じ気持ちなんだと確かめて、
友達だった時とは違う呼ばれ方に少しずつ慣れ始めてきた。


「ユウ、」

「あ、お疲れ様ー。」

「待たせてしまいましたね。少し長引いてしまって。」

「んーん、大丈夫。」

木手くんは今日は委員会のために部活はお休み。部活以外でも頼りにされている彼は忙しい。

「ちょっと、コートへ行っても?」

「うん、行こう!」

お休みしても、やっぱり気になるよね。そんな所も大好き。

実感すればするほど胸の奥がくすぐったくて、それから少しだけ痛い。

どうして私なんだろう、もしかしたら、からかってるだけ、とか?

嫌な思いがじわじわ浸食してくるから頭を軽く振った。

「どうしました?具合いでも、悪い?」

「う、ううん、なんでもないの!それよりさ、昨日の宿題の答えは、心配しないで。って事でしょう?」

「正解です。」

「へへ」

あのあとから、木手くんは私に会う度にうちなーぐちを一つ、宿題に出す。

その場で携帯ですぐ確認出来るけど、そうしない理由は私も木手くんも分かってる。

2人だけの、やりとり。
特別な感じがして嬉しさで胸がいっぱい。

「では、今日の宿題です。」

もうすぐ、テニスコートに着くという所で木手くんが立ち止まる。

「なあに?」

首を少し傾げて彼の瞳を覗く。

「ユウ、」

「は、はい。」

「しちゅっさー」

「!」

とっても、とっても優しく言うから恥ずかしくて、嬉しくて。
木手くんは私がこの意味、わからないと思ってるんだね。

「‥木手くん」

「はい?」

「ごめん、私この意味、わかり、ます」

「!!」

彼の顔が少し紅くなって、それから私から目を逸らした。
知ってるよ、好きって意味だよね。

「予習、してたんですね?」

「ご、ごめん。」

木手くんが片手で顔を隠して、まいりました、と小さく呟いた。
そんな風に照れる姿を見るのが初めてで、とても嬉しい。いつものクールな表情とは全然違う、私だけの木手くん。

「木手くん‥」

「‥なんです?」

彼の空いているもうひとつの手をギュッと握る。

「‥でぇーじしちゅん」

今度は私が木手くんの目を見て。
大好きって。

「‥‥‥‥これ、何て拷問?」

さっきよりも頬が染まる彼を見たらなんだか笑えてしまった。

「っ、あははは!」

「覚えてなさいよ。」

メガネをくっと上げて私の手を取ってコートへとまた歩く。

着いた頃にはもう部活は終わってしまっていたけれど、初めて見た彼の顔を思い出すと考えていた不安はもうどこかへ消えてしまっていた。

その代わりこんな風に、色んな顔を自分だけに見せてほしいな、と私は少し欲張りになっていた。






fin.








↓アトガキ

懲りずに書いてしまいました。

木手さん萌えがとまらなくて、すみません・・!!

でもこのおはなしは書いていてとても
おもしろかったです^^

読んでくださってありがとうございました。




20131016 彗


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ