予習復習は大切に 「慧くん、それ取って」 「ぬーんち、どぅーくる取れよ！」 「そういや、凛やまたいなぐ子んかい告白されてたやっさ〜」 「アシバー、アシバー」 「ターガだしよ！」 私はソファーに座りながらクッションを抱いてじーっと皆の会話を聞いていた。 だめだ、全然わからない。 なんとなくでは感じとれるけど、それは皆の表情や態度で分かるわけで。 挨拶とかは覚えたけど、やっぱり難しい。 「どうしたんです？」 横から話しかけられてハッと気づく。 そうそう、私たちは木手くんちで集まってテスト勉強をしている最中でした。 今は一段落して知念くんの持ってきたお菓子を食べながらお喋りをしていたんだけど。 「いや、うちなーぐち、難しいなって・・」 「そういう事でしたか」 木手くんは少し訛っているけれど標準語で話しているから分かるんだけどな。 「皆が言ってること分かれば、もっと楽しいのに。」 抱いてたクッションに力を込める。 「俺が教えてあげますよ。」 はい、と差し出された木手くんの手にはチョコレートのお菓子。 「・・ありがと」 ふたつの意味でお礼を言って、もらったお菓子をポリポリと齧ると 「あー、やったータックワイヒックワしてるねー？」 甲斐くんが話しかけてきた。急いで木手くんの方へ顔を向けて目で訴える。 「・・あなたたち、イチャイチャしてますね？といった意味ですかね」 「え？」 私たちが？ 「ちょっと甲斐くん！何言って・・！」 顔が熱くて、きっと真っ赤になってるよ。 「はは！ちらー赤いさー！」 「甲斐君やめなさいよ。」 「やしが笹原からかうぬ面白いもん」 ごめんごめんと甲斐くんが謝ってくれたけど顔のほてりが治まらない。 「もう・・。あ、そうだ、木手くん。うちなーぐちの話の続き、だけど」 なんとか誤魔化したくて手で顔を仰ぎながら木手くんに話しかける。 「ええ。」 それからしばらく木手くんに沖縄の方言を色々教えてもらった。時々メモを取りながら。 「えっと、じゃあさっき田仁志くんが言ってたどぅーくるって？」 「これは、自分で、自分自身でという意味ですね。」 「なるほど・・」 もう皆もテスト勉強なんてそっちのけで好き放題で、木手くんもこうなるとは思ってましたなんて言っていた。 「笹原さんはどうして急にうちなーぐち、覚えたいと？」 「え？うん、皆が言ってるのが分かれば楽しいなって、いうのはさっき言ったよね・・・」 「あぁ、そうでしたね。」 「それと、私も伝えたい、かなって」 「なんです？」 「ごめん。な、な、なんでもないよ！」 この件に関してはあんまり問い詰めないでほしい。 「まぁ、言いたくないなら・・」 相変わらず皆はうるさくて、私の心臓もとってもうるさい。 「・・さっき甲斐くんが言ってたヤッターはあなたたち、だよね？じゃあウンジュは？」 「あなたたち、とあなたの違いですね。」 「へぇ、一人と複数で違うんだ。」 「そうですね、例えて使うならば・・」 クイっと木手くんが眼鏡を上げて、真っ直ぐに私を見つめてくる。 「ウンジュヌことがカナサンヤイビン。」 「・・・？」 彼が言葉を発した後、部屋中が静まり返った。なに？なに？ 「・・・・え、永四郎、じゅんになー」 しばらくの沈黙の後、甲斐くんがポツリ。 「えぇ。」 それに木手くんはさらりと答える。 ちょっと待って。私だけがおいてけぼり？ 「え？木手くん今言ったのって・・・？」 「笹原さんへの宿題ですよ。」 「ちょ、ちょっと！」 引きとめてみたけど叶わなくて、ただただ木手くん以外がずっとニヤニヤと笑ってた。 結局帰る時間になったから私は仕方なく宿題を持って帰ることに。 玄関で木手くんに別れのあいさつをしたら、宿題の提出日は明日ですよって言われてまた皆が笑った。 帰ってから言われた意味を調べたら、もう夕飯なんて食べられないくらい胸いっぱいで。 『あなたのことが好きです。』 私も同じ様に伝えたくて、うちなーぐち覚えたかったなんて明日宿題を出した木手くんに伝えたらどんな顔するかな。 針が早く進まないかじっと時計を見つめながら思った。 fin. ↓アトガキ うちなーぐち、難しいです・・ ネットで調べただけなので 大いに間違ってるかと思います；； というか、上記のうちなーぐちは今使ってないでしょ！と言われたら認めざるを得ません‥ でもお話しの流れ的に仕方なかったんです！普通にイチャイチャと話すと思います‥笑 す、すみません・・！！ ちなみに最初の会話は 「なんで、自分で取れよ！」 「そういや、凛てばまた女の子に告白されてたな」 「遊び人、遊び人」 「誰がだよ！」 的な感じで・・ 何卒ご勘弁を！！ 読んでくださってありがとうございました。 20131016 彗 |