novel/しょーと

□想い、想われ
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...













想い、想われ〜彼女の場合〜











「‥‥ん、」

寒さで目が覚めると時刻はまだ丑三つ時。
少しだけ開いている窓からは冷たい風が吹いてくる。
昨夜寝る前に閉め忘れたみたいだ。

(閉め、なきゃだよね)

面倒な気持ちを無くすのに少し時間がかかったけど隣に眠る人を考えれば閉めないという選択肢はない。

(永四郎に風邪ひかれても困るしなー)

静かに寝息をたてる彼を起こさないようにそっと体を起こし冷たい床へ足を下ろす。
キシッとベッドが音を立てると心臓がびくっと跳ねた。

(今ので、起こしちゃった?)

顔だけ永四郎に向けてみたけど、よかった。寝てるみたい。

ひんやりとしたサッシに手をかけて窓も静かに、静かに閉める。

彼の部屋に泊まりに来るのはもう何回もあるのだけれど、未だに少し緊張してしまう。
私の部屋とは違う、男の人の部屋。

綺麗にコーディネートされた永四郎らしいインテリア。
キャビネットには私が買ったカラフルな写真立てがあって、妙に浮いている。
でもそれが私がここに居てもいいんだという証みたいで嬉しい。

月明かりがこの部屋を照らしていて、ただ綺麗で少しぼんやりしてしまったみたいだ。

肩が冷えたのを実感して温かなベッドへと戻る。

(さむいさむいさむい)

今度はあんまり気を使わずに急いで、彼の横へ。

(‥永四郎、あっち向いてる)

繊細で、でも逞しい筋肉のつく背中が私の目の前にある。
着ている服の上からでも分かる無駄のない体つき。
耳の後ろから肩にかけての綺麗なライン。
うっとりと見つめてそっと手を彼の背中にあてる。

心がほどけていくような体温が伝わって、愛しさがぐんぐんとこみ上げてきたらもう我慢出来なくて、永四郎の背中に抱きつく。

(わたし、変態みたいだ)

すり、と頬を背中に寄せると永四郎の甘いムスクの香りが嗅覚をくすぐる。

(こっち、向かないかな。)

ぎゅう、と回した腕に力を込めたらくるりと彼がこちらを向いた。

「‥起きてしまったんですか?」

「うん。ごめん、起こしちゃったね。」

「構わないですよ。」

眉間に少し皺を寄せて小さな声で私の相手をしてくれている。

じわ、と目尻に涙が溜まると永四郎の半分ぐらいしか開いてなかった目がスッと開いた。

「なに、泣いてるの?」

「ご、ごめん。なんか、目が覚めて、永四郎があっち向いてるのが、さ、」

寂しくて、と言い終わらないうちに抱き寄せられてた。

「‥ユウは馬鹿ですね」

「‥‥だ、だって」

愛しすぎて泣いてしまうなんて、馬鹿だよね。

私の寂しさを打ち消すかのように額にキスを落として。

永四郎の胸に耳を寄せて規則正しい心拍数を聞けばその心地よさに心まで暖かくなってウトウトしてくる。


「また、おあずけですか」


瞼を閉じると永四郎の声がしたけど、睡魔には勝てそうにないよ。

(‥‥また?‥ってなんだ‥)

明日起きたら聞いてみようと思って眠りについた。











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