嘘つきな恋 3 跡部と付き合ってから、痛いほどに分かってしまった。 幼なじみ、愛実ちゃんへの気持ち。 「いつまで目閉じてんだよ、バーカ。」 「‥っ、‥‥だって。」 キスの後の名残惜しさが切ない。胸の奥の方がキリリと傷む。 いつまでも離れていたくなくて、なんて言わなくても伝わっているんだろう。 跡部は一瞬離れた私の腕を引っ張りガブッと噛みつくようなキスをしてくる。 下唇をペロリと舐められフッと笑われると、見透かされている様で耳が熱くなった。 「送ってく。」 「‥‥うん。」 背を向け上着を羽織る跡部が早くしろとこっちを見てくる。 その刹那、跡部が私に愛実ちゃんを重ねているんじゃないかなんて、馬鹿らしい考えが頭を過ぎる。 幸せな時間が増えるほど、心が凍りついた様に痛い。 なんて弱い私の心。 手を繋ぎたくて少し急いだ。 跡部の幼なじみ、愛実ちゃんはやっぱり跡部と幼なじみなだけあって、なんというかキャラが強い。悪口じゃなく、特別と思ってない感じだ。 それに跡部もがっつり甘えていて、割と振り回されている。 跡部をよく知る前までは、何が何でも好きな女を自分のものにするのかと思っていたけど、愛実ちゃんに対する思いは180度違った。 大切に傷つけないように見守っている。 心地良い暖かさを感じた。 そうやってぼやぼやしてたから、他の人に奪われちゃったのに。 でも、それでも構わないのか愛実ちゃんが幸せならと一番近くて一番遠い存在になったんだ。 跡部らしくない。 初めはちょっとムカッとして、それから気付いた。 「らしくない」なんて誰が決めた? それが跡部の一部なんじゃないの? みんなが作り上げた「跡部景吾」じゃない跡部。 それが分かると愛しくて、幸せにしてあげたいと強く思った。 |