short story
□背中
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「ねぇ、アカネ…今日のグレイ、どうしちゃったの?」
『へ?』
「朝からずーっと服着たまんまよ?」
『……買zントだ!!』
ー背中ー
ミラが首を傾げながら見る目線の先。そこには私の愛しい彼氏・グレイの姿。
彼の“脱ぎ癖”という何とも理解に苦しむ行動は、今やギルド内の超常識になりつつあるのだけど…
その彼が!今日は一度も服を脱いでいないのである。
「珍しいこともあるのね〜」
『どうしたんだろう、昨日まではバリバリ脱いでたのに』
「意識して脱ぎ癖を直そうとしてるのかしら?」
『だとしたら全力で応援します!』
「ふふっ、それもいいかもね」
所かまわず脱ぐグレイには正直悩まされることも多々あった。それが彼の個性なのだとしても、やっぱり常識の範囲内に落ち着いてくれたらこの上ないと思う。
私はグレイに意を尋ねるべく、シャツを羽織ったその背中に近付いた。
『グーレイっ』
「おーアカネか」
『ねぇ…今日はずっと服着てるんだね?ミラに言われて気付いたよ』
「…まぁな」
『もしかして脱ぎ癖直そうとしてるの?』
「…いや、なんつーか、今日は脱げねぇんだよ」
『?…なんでー?』
「アカネのせいで脱げねぇの」
『??』
訳のわからない私を手招きし、他からは見えないようにそっと背中を見せてくるグレイ。
「これ、見せらんねぇだろ〜?」
『狽ミゃあ!ご、ごめんなさいっ!』
「ま、俺的にはみんなに見せびらかしたい気もすんだけどさー」
『やー!やめてやめてっ服着ててっ!』
素早く着直したシャツの下。
筋肉質で逞しいグレイの背中には…真新しい引っ掻き傷が数本紅く刻まれていた。
「昨夜は激しかったもんなーアカネ」
『もーっ!言っちゃだめぇー!』
「可愛く俺にしがみついてよぉ」
『やぁーっ』
「すっげぇエロかっ…
『グーレーイーっ!』
イタズラに笑うグレイに、真っ赤な顔をし叫ぶ私。
周りは“なんだ、どうした”と視線を向けてくるけど…これは到底説明できません…!!
「…今夜も刻むかい?アカネさん」
『!…ばか』
「ははは」
fin
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