short story
□流れ星
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満天の星空のもと。
見上げれば吸い上げられそうなほど広がる世界。
手を伸ばしても背伸びをしても、届くはずなどないとわかっているけど。
ー流れ星ー
少し冷えるこの時期の真夜中。
それでもどうしても星が見たいという私に付き合ってくれたのはもちろんグレイで。
寒さなんてへっちゃらな彼は大胆にもいつものように上着を脱ぎだした。
「アカネ、これ着とけ」
『え、いいの?…グレイ寒くない?』
「俺は平気」
『じゃあ…ありがとう』
上着を譲り受け袖に腕を通すと、ほのかにグレイの香りと温もりが残っていて、なんだか抱き締められてる感覚になる。
そんな事を思いながら再び夜空を見上げると、一筋の光がビュンと素早く通り過ぎていったのが見えた。
『あ!流れ星っ!すごーい!』
「あぁ、綺麗だったな」
『うん!私、流れ星初めて見たよ!』
「はは、興奮し過ぎだって。」
『だって凄いじゃん!うわー!』
願い事なんてする余裕はなかったけど、それでも初めて見れた流れ星は私の心を大きく感動させた。
グレイと一緒に見られた事も、嬉しい要素の一つなんだよ。
「じゃあこんな事言ったら…アカネ余計興奮すっかなぁ…」
『え?なになに?もしかしてまた流れた!?』
私の言葉を聞いてグレイはニコっと笑う。
「あぁ。流れてきてアカネのポッケに入ったみたいだ」
『…へ?』
「上着のポッケな」
『?』
グレイに借りてる上着。その右ポケットをゴソゴソ探ってみると、そこには確かに何か入ってる。
手で掴める程の大きさのそれを目の前に持ってきた時…やっぱり流れ星は願い事を叶えてくれるんだ、と思えるような気がした。
『グ…レイ…』
「貸して」
『…うん』
私の手からグレイの手に渡ったのは、まるで空の星のようにキラキラ光る宝石が付いた指輪。
グレイは迷うことなくそれを薬指にはめ、私を強く抱き締める。
「アカネは星が大好きだって知ってたけど、やっぱさすがにそれはプレゼント出来ねぇからさ…だからせめて、こんな星空の下でこの指輪をはめてやりたかった」
『グレイ…』
「これから先ずっと…こうして2人でいてぇんだけど…どう思う?」
『…最高に幸せ!』
「はは、俺もだよ」
グレイを見上げるとたくさんのキスが降ってきて、それに応えたくて私も精一杯背伸びをした。
星達は踊るように瞬いて、まるで私達を見守ってるようだった。
手を伸ばしても、背伸びをしても、届くはずなどないと思っていた星は
今確かに、私の指で輝いている。
Fin
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