short story
□加速
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顔が熱い。胸が熱い。体が熱い。
どこもかしこも、熱くて火傷しそうだ。
ー加速ー
いつからだろう。こんなにもナツの事を見ていたのは。
普段から目立つ奴だから、自然と視界にとらえてしまうんだと思っていたのに。違う、私がただ目で追っていたんだ。
そして、なぜだろう。こんなにも全てが熱い。ナツの魔法が炎だから?ううん、きっと関係ない…。関係ないのに何でだろう。
「どーしたアカネ、何か考え事かー?」
『うわっ、ナツ』
「うわってなんだよ、失礼な」
『はは、ごめん』
「んで、どーかしたのか?」
『ううん…』
あなたのことを考えてたの、なんて言えたらどんなに楽なんだろう。だけど、そんなもどかしい気持ちよりも先に今ナツが隣に居る事実が嬉しすぎて、はにかんでしまう。
ナツはいつだってそうだ。私が落ち込んでる時や考え事をしている時、誰よりも早く気付いて声を掛けてくれる。
仲間想いだから、きっと私だけじゃなく皆にも同じ様に接しているんだろうけど。それでも嬉しいんだ。ナツがこうして来てくれる事が。
「アカネはいつも“ううん”だな。本当か?隠し事はなしだぜ?」
『うん、本当に大丈夫だよ。ちょっと疲れてるだけ』
「そっか」
桜色の髪がふわっと揺れて、大きな手の平が私の頭に乗せられた。わしゃわしゃと少し荒っぽく、だけど優しい手つきで撫でる動きに私は思わず目を瞑る。
「俺、アカネの笑った顔が好きだから…あんま俯かねぇで笑ってろよ?な!」
ナツの言葉に、私は目を瞑ったまま頷いた。今目を開けてナツを見たら、きっと心臓がもたないから。体が熱くて沸騰しちゃうから。
『ありがとう』
「おう!」
顔が熱い。胸が熱い。体が熱い。
どこもかしこも、熱くて火傷しそうだ。
加速してくばかりのこの想いが焦がれて焦がれて、キュンと鳴いてる。
Fin
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