short story

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グレイの妹・アカネは、その後何度か妖精の尻尾に出入りするようになり、仲良くなったエルザやミラジェーンの勧めでギルド内のカフェで働くこととなった。



ーcute!2ー



「アカネちゃん!ビール1つー」

『はーい』

「アカネちゃんっ、こっちはカラメルフランクお願いー!」

『はいはーい!』

にこにこと笑顔で働くアカネはたちまち皆に気に入られ、今ではミラの補佐として立派に仕事をこなしている。
マスターやマカオをはじめとしたおっさん連中だけではなく、ルーシィやレビィなどの女の子達にも大人気だ。
そんな中、一人つまらなそうな顔をしているのがアカネの兄・グレイ。
彼はどうやら、妹が自分の元から離れていくようで何とも言えぬ寂しさを感じているようなのだ。

「…アカネのやつ、あんな愛想ばっか振りまきやがって…」

「良い仕事ぶりではないか。それに接客中はあの位笑顔でいるのが好ましいぞ」

「…そりゃあ要領良いだろうよ、俺の妹なんだから」

「…ったく、何が気に入らんというのだお前は」

「…」

頬杖をつき、せかせかと動くアカネを見ているグレイ。その隣で同じくアカネを見ているエルザは“大した働きぶりだ”と太鼓判を押している。
しかし決して首を縦に振らないグレイはアカネから目線を逸らし、小さく胸中を明かし始めた。

「昔はよ…あいつ、いっつも俺に引っ付いて歩いてたんだ」

「ほぅ」

「泣き虫でさ、俺はいつもあいつの涙を拭ってやってた」

「…お前は昔から優しい兄だったのだな」

「いや…もしも俺が優しいと言うなら、アカネがそうさせていたんだろうよ」

いつになく穏やかな表情をしているグレイに、一瞬驚くエルザ。幼なじみと言える程、長年近くに居たハズなのに、こんな顔は初めて見るような気がしたからだ。
そして、長年の付き合いだからこそ、グレイの妹へ対する愛情がひしひしと感じ取れる。

「どんなに泣き虫だった妹も、いつかは自立するものだな。アカネを見てみろ、立派な女性に成長したんじゃないか?」

「あぁ。あんなに大人になってたんだな…」

「アカネの事が大切なら、その成長を喜ぶべきだと思うぞ」

「あぁ…その通りだ」

再びアカネを見るグレイの目は細まり、今にも泣き出しそうに潤んでいる。そんなグレイの肩をポンと叩いたエルザは“たまには呑むか”と呟いた。

アカネを見守りながらの一杯…それも悪くないな、とグレイがエルザの方へ体を向けたその時、大きく響き渡るナツの声がギルド全体を包み込んだ。そしてその声を聞いたグレイは瞬時に席を立ち、走り出した。

「アカネーっ!今日俺ん家来ないかー!?一緒に遊ぼうぜ!」

『えっ?あ、はい…でもあの、今はまだ仕事中なので…

「んじゃ、終わるまで待ってるからよー!」

『はい…じゃあ…

「狽ソょーっと待てクソ炎ー!!」

「ぐはぁっ」

ナツの脇腹に見事な一撃をお見舞いしたグレイはそのままの勢いでアカネを抱き締めナツから隠す。
そして鋭い目線と殺気を、倒れたままのナツへ浴びせる。

「てめぇ、アカネを誘うとはいい度胸だ」

「は?何がだよ!俺はただ遊びに…

「家に来いっつっといて何して“遊ぶ”つもりだオラ」

『ちょ…お兄ちゃん、やめてよ』

「アカネ大丈夫だ、こんな奴兄ちゃんが追い払ってやるからな」

『もう〜!何言ってんの!?』

困り果てたアカネの顔は、グレイから見ればナツのせいということになっているのだろう。
だけど実際、アカネが困っているのは明らかにグレイのせいであって、それに気付いてもらえないことにさらに眉をひそめているのである。

「ナツ!俺の可愛いアカネと話したければ俺の許可を取れ!」

「はぁ!?ふざけんな!」

「大真面目だ!アカネはまだ誰にもやらねーぞ!」

『もぉ、何の話してるのお兄ちゃん〜』

「アカネ、変な男が言い寄って来たら兄ちゃんに言えよ?わかったか?」

『…うぅ』

その場に居合わせた全員が寒気を感じたのはグレイが氷の魔導士だからだ…と思いたい。
そして少し離れたテーブル席では、独り言を言いながらお酒を呑んでいるエルザの姿があったのだった。


「成長しないといけないのはお前のほうだなグレイ…」



グレイとナツの怒鳴り声に、アカネの困り果てた顔。
それが今後しばらくの間、妖精の尻尾の日常となりそうな予感…。





Fin

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