short story

□princess
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大魔闘演武、そしてドラゴンとの闘いも終わり、城の中では今まさに妖精の尻尾をはじめとしたギルドの面々が勢揃いしている。



ーprincessー



王や姫の計らいによって打ち上げパーティーがひらかれている城内は、数日前のギルド間での殺気は嘘のよう。あちらこちらで笑い声が溢れている。
こんなにも一体感が生まれるものなのか。不思議な気持ちと同時になんとも言えない幸福感と達成感に包まれる。
そんな中、グレイはある人物のことを捜していた。

「なぁウェンディ、アカネ見なかったか?」

「アカネさんならまだメイクルームに居ましたよ」

「そうか。さんきゅー」

「あ、グレイさん」

「ん?」

「アカネさんのドレス姿、すっごく綺麗でしたよ!」

「はは、ウェンディがそう言ってたって聞いたらあいつ喜ぶな」

「いえ、それは違いますよ!」

「違う?」

「私じゃなくてグレイさんが言ってあげるほうが喜ぶに決まってます!」

「…参ったな。ウェンディの方が一枚上手か」

「ふふっ、言ってあげて下さいね?」

にこっと笑うウェンディの頭をひと撫でし、お礼を言うと、グレイはアカネを迎えに行く為、メイクルームを目指して歩き出す。しかしその足はすぐに止まり、目線の先にはたくさんの人に囲まれているアカネの姿があった。

綺麗、かわいい、こっちを向いて
と四方を囲まれながら言われているアカネはいつもよりも数倍頬を赤らめているように見える。
自分の彼女はこんなにも有名人だったか?と苦笑いするグレイもまた、何故か頬が赤らんだ。

「しかしこりゃあ…ウェンディの言ってた通りだな」


彼女の元に近付くと、グレイに気付いた数名が道をあける。“王子様の登場だ”とはやし立てる者の中にはいつものギルドの仲間の他に兄弟子の姿まである。

賑やかな輪の中、グレイに気付いたアカネは彼に小走りで駆け寄った。

『グレイっ』

「大人気だな、おまえ」

『そんな事ないよ…エルザやルーシィもすっごい囲まれてたよ。はぐれちゃった』

「じゃあ、俺からははぐれんなよ」

グレイはスッと片膝を床に落とし、アカネの左手を取った。そしてその細く真っ白な指先に小さなキスを一つ。

「今日のアカネはまるで姫みてぇだからさ…俺は王子になってエスコートするよ」

2人を見ていた周りの者達の歓声の中、グレイは照れてはにかんでいるアカネの小さな返事を聞き逃さなかった。

『じゃあ…お願いします』

「おう」

立ち上がったグレイの腕にそっと寄り添うアカネ。誰の目にもそれは本当にどこかの国の王子と姫を見ているかの様な光景で。

恥ずかしそうに少し俯いたアカネに、グレイは優しくこう告げた。


「ドレス…すげぇ似合ってる」



さらに照れて赤くなるアカネ。その隣でグレイは、目が合ったウェンディにニッコリと微笑んだ。








fin


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