short story
□誘拐
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飲んで飲んで語り明かして。
妖精の尻尾恒例の宴会は夜中まで続き、1人…また1人と酔いつぶれて眠りについていく。
ー誘拐ー
川の字で…なんて言ったら可愛すぎるだろうか。ゴロ寝…うん、これがしっくりくるね。
そう、今仲間達はみんな、ギルド内でゴロ寝状態。テーブルも椅子も食器もジョッキも、入り乱れて床に散乱している。
あぁ、明日片づけるの大変だわ…なんて思いながら私も一緒にゴロ寝に加わる。
『うぁー…目が回る〜…ぅー』
30分前、カナに捕まったのが運の尽き。私の許容範囲を越えた酒量がお腹にはチャプンと溢れている。
明日はきっと二日酔いだなー。
『頭ガンガンコースかな…それともドカンとリバースコースかな…』
やがて薄れそうな意識の中、そんな事を呟いてると思いがけず返事が返ってきた。
「コース?なんだそりゃあ」
『…んー…?』
ものっすごく頑張って目を開くと、そこには私の顔を覗き込むラクサス。あれ?今日の宴会ってラクサスも居たっけ?
『ラクシャシュ…ぅ…居たの〜?』
「あ?今帰ってきた。つーかラクシャシュって誰だよ」
『えへへ、噛んじゃったぁー…おかえりぃ』
「へいへい、酔っぱらいめ」
おでこをペチンと叩かれる。ちょっと、余計に目が回るじゃないのー。
『うわぁー…ラクサスやばいよ…私、体がふわふわしてるー』
「ぷくぷくの間違いじゃねーの?」
『なんだとー失礼な…ってあれれ?』
今度は私がペチンとやってやろうと手を伸ばしたら、思いのほか近くにあるラクサスの顔。
そして本当に体がふわふわしてる…?
「どーした?」
『ラクサス…なんで私は抱っこされてるの?』
「んー、移動しようかと思ってな」
『ん?』
「ここじゃ背中痛ぇだろ」
『大丈夫だよー何度も寝てるし…』
「特別に俺様のベッドで寝かしてやるよ」
『あれ?話通じてる?ってか下ろしてぇ』
「却下」
とてつもなく意地悪な笑みを浮かべたラクサスは、私が酔っててうまく抵抗出来ないのを良いことにどんどんギルドの外へ歩いていく。
『誘拐だーぁ』
「何とでも言え」
なんだかわかんないけど、ラクサスの腕の中は温かくて落ち着く揺らぎで…顔がポカポカ火照っているのは、きっとお酒のせいだと自分に言い聞かせた。
初めてお姫様抱っこをしてくれたのは、王子様ではなく俺様でした。
『ラクサスんち…行くの?』
「あぁ。光栄に思え」
『う、』
「…おい?」
『…ベッドの前に…トイレに連れてって…』
「まじか…着くまでは吐くんじゃねぇぞ」
『う、ん…ぅ』
「……」
Fin
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