short story
□アイス
1ページ/2ページ
「…」
『…』
「いやー本当なんつーか…」
『…』
「…毎度毎度すいません…」
『グレイのばかぁ』
ーアイスー
私の名前はアカネ。
目の前に居るのは彼氏のグレイ。
自分でいうのもなんだけど、私達は普段すごく仲がいい。
ただ、たまにこうしてグレイが謝る時がある。原因は彼の魔法。
「アカネ…」
『まぁ…いつもの事だし…いっか』
「いやー…気をつけるわマジで」
『ふふっ、いいのよ』
2人で並んでカップに入ったアイスコーヒーを飲む。
…そう、原因というはズバリこれ。元々はホットコーヒーを出したのに、グレイが“熱い”と感じて反射的に凍らせてしまったのだ。
『アイスも美味しいね』
「アカネが淹れてくれたからうまいんだよ」
『またそんな事言ってー』
「本当だよ」
『ありがとう』
いつだったか、スープが冷製になったことがあった。焼き芋はスイートポテトに。だけどそれはまだマシだったかな。なーんて、思い出せばキリがないけど。
でも、それもイイ思い出だよね。
『グレイ』
「ん?」
『なんか、グレイと一緒なら…私なんでもいいや』
「なんでもいい?」
『冷たいコーヒーもスープも、グレイと一緒なら…
「心がポカポカ…ってか?」
『もぉー!私が言おうと思ったのにー』
「ははは、いや、俺も同じ気持ちだからさ」
グレイがすぐ隣まで来て、そっと肩を抱いてくれる。また裸だなー。だけど…
『すごくあったかい…』
「俺も」
『私の事凍らせないでよ?』
「当たり前だろ。でも…」
心があったかい。触れている体もこの部屋の空気も。
そしてきっとこれからの2人の未来も。
「もし凍らせちまっても、すぐに俺があたためてやるよ」
すごく、あったかいよ。
Fin
→
.