short story
□リトルガール
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動揺する俺の腕からするりと逃れたアカネは、頬を押さえて“美味しい”とくねくねしてる。
「ラクサス…」
「あ?なんだよ、ただの飴だろ?」
「どこぞの知らねぇ婆さんから貰った怪しい飴なんだよ!」
「へー。ま、俺はアカネが“口に入れて”なんて言うから入れてやったんだよ」
「…お前、アカネのこと変な目で見てんじゃねぇだろうな」
「はっ。俺はもうちょい胸のある女が好みだな」
言い合っている俺達をよそに、アカネは今だに飴を味わってる。
「…アカネ、何か異変はねぇか?」
『大丈夫だよー!それにしても何なんだろうね、“飴を食べると恋人が喜ぶ”っていう話は…』
「“食べると恋人が喜ぶ”?」
「ラクサス、何か知ってるのか?」
「あぁ。グレイ、耳貸せ」
「…」
アカネを見ると、飴を食べることが出来て満足してるのか、どうやらもう逃げる気はないらしく大人しくしている。
アカネをその場に残し、俺はラクサスに近づいた。そして、アカネが婆さんに言われたことを説明した。
「…何か知ってんのか?」
「いやぁ。あくまで予想なんだけどよぉ」
「何だよ、なんでも良いから教えてくれ」
「そうか、まぁお前にとってはラッキーなことだぜ」
「だから何なんだよ」
なかなか言い出さないラクサスに詰め寄ると、ようやく口を開き予想外の言葉を口にした。
「グレイ、そりゃあきっと媚薬だ」
「…は?」
「早くアカネを連れて帰りな」
「媚、薬…だと?」
「なんなら俺が持ち帰ってやってもいいぜ?ん?」
「ふ、ふざけんな…!アカネっ、ちょっと来いっ!」
「アカネ、たまには俺んち来るか〜?」
ラクサスと2人でアカネの方へ振り返ると、そこにはアカネの姿がない。
…いや、正確にはアカネの代わりに小さな少女が座っている。
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