short story
□リトルガール
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仕事から帰ってきたアカネが、何かを握り締めながら俺の元へと走ってきた。
ーリトルガールー
『グレイ、グレイ、グレイー!』
「おかえりアカネ」
『ただいま!あのね、これ貰ったの!』
「ん?」
アカネは俺の目の前に手を差し出すと握っていた物を見せてくれる。
「何だ?飴?」
『うん、帰りに通った森で知らないお婆さんがくれたの!なんか、どこかで会ったことがあるような、ないような…とにかくお婆さん!』
「うわー…絶対食うなよ、怪しすぎる」
『えー』
「えー、じゃねぇ」
手に乗った飴をまじまじと見つめるアカネ。
聞けば、森を歩いてた時に見知らぬ婆さんに声を掛けられ、何故かこの飴を貰ったのだという。
『なんかね、これを食べるとグレイが喜ぶらしいの』
「は?何で俺が…」
『よくわかんないけどー、“食べたらあんたの恋人がきっと喜ぶよ”って、お婆さんが。』
「まったく根拠はねーだろソレ。つーか益々怪しいっつーの」
どうしても食べたいというアカネの手から飴を奪おうと近寄るが、なんせこいつはギルドでも指折りの俊足。
すぐに逃げられ…
「アカネ、危ねー!」
『うぎゃっ』
「うおっ」
外に出た所で、あろう事か勢い余ってラクサスにぶつかってやがる。
『ご、ごめんねラクサスっ』
「アカネか。前見ろよな、俺でも避け切れねぇほどのスピードで走りやがって…」
『あぃ…本当、すいません』
「グレイ、てめーも自分の女に逃げられてんじゃねぇよ。痴話喧嘩か?」
「いや、そういうわけじゃ…って、アカネ逃げんなっ」
『あひゃっ』
ラクサスと話してる隙に逃げようとしたアカネをなんとか捕まえた時、俺達の足元に例の飴が転がり落ちた。
『あっ!』
アカネがすかさず拾い上げようとするが、その体は俺の手によってがっちりとホールドされている。
『離してよグレイー』
「ラクサス、それ捨ててくれ!」
「あ?」
『ラクサスだめー!包みを開いて私の口に入れてっ!』
「ダメだ、捨てろっ!」
「ほう…」
ラクサスは俺達の言葉を聞いて、ニヤッと笑う。
そして大きく開いてスタンバイしているアカネの口の中に“ほらよ”と飴を放り込んだ。
「あ!ラクサスてめぇ!」
『んーおいちー!』
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