short story
□7年分の愛を君へ
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あれは7年前のS級魔導士昇格試験。
グレイは“絶対S級になって帰ってくる”と言って天狼島へと出掛けていった。
だけど、それきり帰っては来なかった。
ー7年分の愛を君へー
グレイや他の試験関係者は天狼島ごと消えてしまった。
聞けば、アクノロギアという一頭のドラゴンによってその様な事態となったらしい。
はじめのうちはとても信じることなどできなくて…ギルドの皆で周辺海域をくまなく捜索した。
だけど何日経っても何週間経っても…7年経った今だって、誰1人として見つけることは出来なかった。
『グレイ…』
今も瞳を閉じると、愛しい人の姿が蘇る。最後に交わした会話だって、手に触れたあの温もりだって。
忘れられずに体中を駆け巡る。
この7年で私達を取り巻く環境は恐ろしいほどに変わってしまったけど、それでも妖精の尻尾に居続けるのは…今もずっと奇跡を信じているから。
「おーい妖精の尻尾ー!」
「ギルドってよりコレ何よ?同好会?」
「あひゃひゃひゃ」
『…』
黄昏の鬼。現在、妖精の尻尾よりも力を付けたこのギルドは毎日のように借金の取り立てにやってくる。
妖精の尻尾の仲間を傷付け、ギルド内をめちゃくちゃに破壊し、嘲笑いながら私達を見下す。
だけど何よりも悲しいのは、そんな相手に立ち向かうだけの気力も体力も…今の妖精の尻尾には残っていないということ。
「支払いは来月のハズだろ!?」
「期日通り払ってくれねーと困るって」
「おまえらに払う金なんかねぇよ」
「よせロメオ」
もう何回こんな場面を見ただろう…まだ幼いロメオまでも前線に立って、黄昏の鬼に向かっていく。
『もうやだよ…』
弱音なんて吐いてる場合じゃないのに、でも心はもうボロボロだった。
それでもなんとか涙でぼやけた目を凝らす。すると…
『ロメオっ…!』
目の前では今まさに、敵の1人がロメオに向かって武器を振り下ろした瞬間だった。
「やめろぉー!」
『いやー!』
ドッゴォーンっっ!!!
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