short story

□涙の粒
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自分で言うのもなんだけど、私は子供の頃から泣き虫だ。
悲しい時はもちろんだけど、嬉しくても感動しても、何故だか涙が溢れてくるの。




ー涙の粒ー



例えば大事なものを無くした時。
例えば大事なものを見つけた時。

そこにあなたが居なくても。
そこにあなたが居てくれても。





「みーつけた」

『…グレイ』

何かあって涙が溢れそうな時、私は決まってギルドの屋根にのぼる。
昔はみんなの前でも平気で泣いてたのに、どうして大人になるとそれが出来ないんだろう。

誰にも知られないように、
誰にも見られないように、いつも急いで屋根へと上がる。

「アカネはここが好きだな」

『…グレイこそよく来るね』

頬を伝っていた涙を拭うと、グレイが私の顔を覗き込んだ。

「で、今日は何があったんだ?」

『なんでもないよ』

「…ったく、いつもそればっかだな」

二人並んで屋根に座るのはいつの頃からか日課のようになっていて。

もしかしたら、私は…


「アカネ…」

『ん?』

「まだ涙伝ってる」

『あ、ほんとだ…』

「あー待て、触んな」

『え?』

グレイの手が伸びてきて、頬が一瞬冷たくなった。

『っ、何…?』

「ほらよ」

『わぁ…』

グレイの手には一粒の宝石。太陽の光でキラキラと光ってる。

『きれい…』

「それ、アカネの涙だぜ?」

『え?うそ…』

「本当だよ」

さっきの冷たい一瞬で、私の涙を凍らせていたんだ。

「アカネはよく泣くけどよ、いつも綺麗な涙を流してる」

『綺麗な…涙?』

「俺にはそれが宝石みたいに見えててさ。あまりに綺麗で手が伸びちまった」

涙の粒を私に手渡しながら、グレイは優しく微笑んだ。

「どんな涙も1人で流すな。俺がいつでもこんな風に宝石に変えてやるから…」

『グレイ…』


自分で言うのもなんだけど、私は本当に泣き虫だ。グレイの想いが伝わるほどに、こんなにも視界がぼやけるのだから。

「まーた泣くー」

『グレイのせい…だもん…っ』

「はは、この泣き虫め」




もしかしたら私は…グレイに見つけてもらいたくて、いつもこの場所にのぼっていたのかもしれない。



涙の粒は本当に宝石のよう輝いていて、そのあまりの美しさに、私はまた泣いちゃうんだ。





Fin




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