short story

□捕らえられたら
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その瞳は最早武器だと思う。
捕らえられたら最期、もう逃げられなくなるのだから。



ー捕らえられたらー



ギルドに入って数日経ったあの日、私の運命は大きく変わってしまったのです。


一際目立つ金髪の頭。人より一回り大きい恵まれた体格。桁外れの膨大な魔力に、傷痕の残る鋭い目元。

ラクサスに初めて会った時、あまりのインパクトの強さに足元が震えて鳥肌が立ったのを覚えている。

そして初対面の彼から言われた一言は、私の日常を見事に狂わせた。


「お前、俺の女になれよ」

『…はい!?』

新人だからってからかってるのか。そう思った私はラクサスの機嫌を損なわないよう、うまく切り返したつもりだった。

『あ、えっと…そうですね、いつかなれたら光栄です…』

「いつかじゃねぇよ、今からだ」

“光栄です”がまずかったのか、ニヤっと不気味に笑ったラクサスは私に一歩近付いてきた。

『え…あのぉ、それは一体…』

「だから、俺の女になれって言ってんだ」

じりじりと壁際に詰め寄られ、至近距離で見つめられる。
うわー、整った顔してるなぁ……って、そうじゃなくて!

『ラクサスさん…あの…』

「ラクサス。呼び捨てにしろ」

『無理です〜っ』

「呼べ」

『ぁう…ラク…サス…』

「できるじゃねぇか」

次の瞬間、ラクサスの顔が斜めになって。

「よろしくなアカネ」

『!!』

キスされたんだと気づいたのは、唇が離れた数秒後でした。





そんな二人の始まりの日。






『ねぇ、あの時って一目惚れだったの?』

「ちげーよ」

『うそだー』

「ちげーって言ってんだろ」

『でもラクサスから告白してくれて嬉しかったな〜』

「別に告ってねーし」

『またまた照れちゃってー』


あの日から私はずっと、心を捕らえられてしまったんだ。





Fin



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