short story

□抱き締めて
1ページ/4ページ


雪山での怪物退治。
なかなかいい報酬で、少々手こずるかと思っていたその仕事も、アカネとなら難なくこなすことが出来た…のだが…




ー抱き締めてー



「こりゃヤバくねぇか?」

『うん、最悪だね』


帰り道。まんまと吹雪にみまわれた俺達は無闇に進む事も出来ずに、ほぼ足止め状態となってる。

『方向は合ってると思うんだけど…』

「行きの晴れてる時でさえ結構な距離だったからな…この吹雪の中を歩き続けるのは危険かもな」


お互いに初めて来るこの雪山。
地形や雪質の知識も乏しい為、色々な不安が付きまとう。
今進もうとしているこの足下でさえ、もしかしたら崖っぷちの可能性だってある。


『吹雪がやむのを待つしかないかな』

「そうだな…」

このまま進むのは危険。
そう判断した俺たちは、しばらく様子を見ることにした。


『でも…この辺に雪を凌げそうな所なんてないよ』

「それなら任せろ」


心配そうなアカネの手を引き、少し木の茂った場所へ移動する。そして…


「アイスメイク…!」

『おぉー!』


2人が入るのに丁度良い大きさの小屋を作ると、その中へアカネを入れてやる。

『わぁーすごーい!』

「ま、こんくらいはな」


さすがに細かな細工などはしなかったが、少しの間吹雪を凌ぐには申し分ないだろう。

荷物を置き、持ち合わせていた着替えをアカネの座わる場所に敷いてやる。

『いいの…?ありがとう』

「おぅ」


2人で並んで腰を下ろすと、先程よりも外の吹雪が勢いを増したのがわかった。


『透明だから外の様子もわかるね』

「あぁ。これから暗くなるし、仮にも怪物がいた雪山だからな…用心しねぇと」


膝を抱え“早く天気になーれ”と言うアカネ。
可愛いな、なんて口にはしねぇけど…無意識に緩んだ表情に気付かれなくてよかったと思った。



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ