short story
□抱き締めて
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雪山での怪物退治。
なかなかいい報酬で、少々手こずるかと思っていたその仕事も、アカネとなら難なくこなすことが出来た…のだが…
ー抱き締めてー
「こりゃヤバくねぇか?」
『うん、最悪だね』
帰り道。まんまと吹雪にみまわれた俺達は無闇に進む事も出来ずに、ほぼ足止め状態となってる。
『方向は合ってると思うんだけど…』
「行きの晴れてる時でさえ結構な距離だったからな…この吹雪の中を歩き続けるのは危険かもな」
お互いに初めて来るこの雪山。
地形や雪質の知識も乏しい為、色々な不安が付きまとう。
今進もうとしているこの足下でさえ、もしかしたら崖っぷちの可能性だってある。
『吹雪がやむのを待つしかないかな』
「そうだな…」
このまま進むのは危険。
そう判断した俺たちは、しばらく様子を見ることにした。
『でも…この辺に雪を凌げそうな所なんてないよ』
「それなら任せろ」
心配そうなアカネの手を引き、少し木の茂った場所へ移動する。そして…
「アイスメイク…!」
『おぉー!』
2人が入るのに丁度良い大きさの小屋を作ると、その中へアカネを入れてやる。
『わぁーすごーい!』
「ま、こんくらいはな」
さすがに細かな細工などはしなかったが、少しの間吹雪を凌ぐには申し分ないだろう。
荷物を置き、持ち合わせていた着替えをアカネの座わる場所に敷いてやる。
『いいの…?ありがとう』
「おぅ」
2人で並んで腰を下ろすと、先程よりも外の吹雪が勢いを増したのがわかった。
『透明だから外の様子もわかるね』
「あぁ。これから暗くなるし、仮にも怪物がいた雪山だからな…用心しねぇと」
膝を抱え“早く天気になーれ”と言うアカネ。
可愛いな、なんて口にはしねぇけど…無意識に緩んだ表情に気付かれなくてよかったと思った。
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