short story

□赤く赤く
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いつもと変わらない昼下がり。
ギルドの食卓に座って飯を食おうとしたその時、

「ん?」

気づいてしまった。アカネの首筋に付いてる赤いマークに。



ー赤く赤くー



正面に座っているアカネは普段と変わらずルーシィと談笑中。
だけど全く隠れていない首筋に、赤く小さな部分が見える。

おいおい、これってまさか…キスマークかよ?

「グレイ?どうしたのよ、箸も付けずに」

『ホントだ、冷めちゃうよ?』

「お、おー」


平静を装って飯を口に運ぶ。
もちろん味なんてわかんねー訳で。
つーか味なんかよりも、その赤いマークが気になっちまう。

そんな中、レビィに呼ばれたルーシィが席を立ち、アカネと2人だけの空間が生まれた。

このモヤモヤを続けるなんてまっぴらだ。


「アカネ」

『ん?』

思い切って、聞くしかねぇだろ。


「どうした、その首」

『え?あぁ、赤いとこ?実は…ナツにやられちゃって』

「は!?」


ナツにやられただと!?
あいつもアカネもこれがどんな意味を持つかわかってんのかよ。
つーか、あのくそ炎許さねぇ…


『最初はジンジンしたんだけど、今はもう大丈夫よ?』

「大丈夫じゃねぇよ、目立つぞ」

『うーん…でも痕は残らないだろうってミラが言ってくれたから大丈夫だと…』

「そりゃその内消えるだろうけど、ナツの事だからまた付けるかもな!」


何故だかイラっときて、つい口調が荒くなる。アカネは唖然とした表情で俺のことをみている。


『また付けるって…ナツがそんなことする訳ないじゃん!』

「なんだよ。意図的に付けたんだから、また付けるに決まってる」

『ナツはそんな事しないよ!』


アカネまで俺につられて声を荒げる。
ちっ、喧嘩してどーすんだよ。

食べかけの飯を一気頬張り、無理矢理水で流し込む。もうここに居る必要はねぇ。


「そんなん付けるのも勝手だがな、見えないように隠しとけよ」

『だって…』

「見たくねぇんだよっ」


それだけ言うと俺は席を立ちギルドをあとにした。
アカネの話も表情も何も気にかけてはいなかった。

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