short story
□雨よ、やまないで
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『じゃあ、お言葉に甘えて』
今度こそゆっくり腰を下ろすと、普段は少し上にあるグレイの顔が何だかやけに近く感じる。
「なんか…こんなのんびりすんの、久しぶりかも」
『そういえば私も』
「最近忙しかったからな」
『そうだね』
雨が木の葉を揺らし、時折冷たい風が吹く。
『グレイ、寒くない?』
「へーき。氷の中でも生きていけるんだ俺ぁ。」
『あはは、そっか』
上に着ていた服を私の為に脱いでくれたグレイが心配だったけど、どうやら本当に平気なようだ。
「アカネ寒いか?」
『ううん、大丈夫』
「…帰りにあったかい飯でも食うか」
“大丈夫”って言ったのに。
グレイにはお見通しなんだね。
『あ、パフェが食べたい!』
「それ全然冷てぇけど」
『…ほんとだ』
「あほか」
『えへ』
「えへ、じゃねぇよ」
忙しい毎日の中に、たまにはこんな穏やかな時間を。
雨よ、どうかまだやまないで。
帰り道にはなんだか、虹がかかりそうな気がする。
Fin
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