short story

□雨よ、やまないで
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ポツポツ……

…ザザーッッ



「げ、降ってきやがった」

『ぎゃー』







ー雨よ、やまないでー





グレイと仕事へ行った帰り道、
真っ暗だった空は予想通りに雨を落とした。

私達はすぐ、近くにあった大きな木の下に入り雨宿りを試みる。



「はぁ。アカネが歩くの遅いから…」


そう憎まれ口をたたくグレイに、私も負けじと言い返す。


『はぁ。グレイの脱いだ服を拾って歩いてたから…』

「…」



グレイは宿から出るなり“降りそうだから急いで帰るぞ”と言っていた。

私はそんなグレイに返事をしながら、前を行く彼が脱いだ服を拾い集めていた。



『…俺脱いでたか?」

『自分の目で確かめて下さい』


グレイはゆっくり自分の体を確かめる。


「狽ハぉ、まじか」

『そしてこれが私が拾い集めた服です』

「なんかすいませんっした」

『わかればよろしい。』


シャツを羽織るグレイを横目に、私は未だやむ気配のない雨空を眺める。


「今日、ギルドに帰ってから何か予定は?」

『特にないー。グレイは?』

「右に同じ。」



そう言いながら、太い幹を背もたれにして地面へと腰を下ろしたグレイ。

まだまだ待つことになるであろうこの天気…。私も座ることにするかな。

ゆっくりしゃがもうとしたその時、
グレイがまた服を脱ぐ。


『グレイ〜また脱ぐ〜』

「違ぇよ。…ん。」


脱いだシャツを私が座る場所へとそっと置いた。


『え?』

「地面、少し濡れてっから…」

『で、でも…なんか悪いよ』

「もう置いちまったんだから気にすんな、座れよ」


置かれた上着をポンポンと叩き、“ほら早く”と促してくれる。




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