short story

□そんなあなたに
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『うぅ…緊張する…』

「大丈夫よ!あぁ見えて結構いい人なのよ」

「私からも保証しよう、決して悪いヤツではない。」






ーそんなあなたにー





私が妖精の尻尾に入って早数ヶ月。
隣にいるルーシィやエルザ、そして他の仲間達とはもうだいぶ打ち解けてきた(つもりでいる、うん)

そんな中、このギルドのS級魔導士であるあのお方と
とうとう初対面を果たす時がきたのだ。



「顔見せて、名前伝えて…それだけできれば上出来じゃない?」

「あぁ、アカネの誠意が伝われば大丈夫だと思うぞ」

『うん…』

「では私が連れてきてやろう。」




新米魔導士の私には上ることのできない二階へと続く階段に、エルザが足をかける。

と、その瞬間。ピシャッと短かな雷光が目の前に落ちてきた。



『きゃあっ』

「ちょっとラクサス!危ないじゃないの!」

「あん?」



そこには先程まで二階に居たはずのラクサスが。
あぁ、階段とか使わないんですね。



「ちょうど良かった。今お前を呼びに行こうとしてたところだ。」

「なんの用だ。俺ぁ忙しいんだ」

「新しく妖精の尻尾に入ったアカネよ。紹介しようと思って」

『あ、あの…』

「あー…そういうのは別にいらねぇよ。そのうち顔覚えんだろ。…辞めなけりゃな」

「なんだその言い方は!せっかくアカネが…」

「うるせーな…怒らせたいのかエルザ?」

「それはこちらの台詞だ」

「ちょっとエルザ…」

『あの!』

「あ?」

『アカネと言います。数ヶ月前に妖精の尻尾に入りました。よろしくお願いします。』




シーンと静まり返ったギルド内。
あれ?なんか変なこと言った私?



「アカネ…」

『っはい!アカネと言います』

「…まぁ、覚えるかは別だけどな」

『…それでもよろしくです!』

「…」




ラクサスはそれだけをやりとりすると長いコートを翻し、スタスタと歩いて行ってしまった。



「アカネ、あんたよくあの状況で自己紹介できたわね」

「私も感心したぞ。」

『え?そ、そう?』

「でもラクサスは本当人の名前覚えないわよね〜」

「一年もすれば覚えるだろう」

『い、一年…』




一触即発のラクサスとエルザの間に割って入ったのは、どうやら私が初めてだったらしい。

なにはともあれ、ラクサスに挨拶をする、という目標は見事に果たせた。

これでまた一歩、妖精の尻尾の一員として前進できたような気がする。





それからは、仲間に頼りながらも何とか仕事をこなせるようになってきた。
まだまだ未熟者だけど、場数を踏んでもっともっと強くなるんだ!





…けれど私はやっぱりまだ弱者のようだ。
だってほら、こうゆうのって弱い子を選んで仕掛けてくるでしょ?



『…なんなんですか、あなた達』

「お嬢ちゃん、妖精の尻尾の新入りだよね?」

「俺らあのギルドには恨みがあってなぁ」

『…』

「とくに滅竜魔導士のあいつ!」

「あぁ、あの野郎には借りを返さなきゃならねぇ」

「嬢ちゃん、大人しくしてれば何もしねぇからちょ〜っとその面、貸してくんねぇかな」

『…っ』



気持ち悪い笑みを浮かべて私を見る2人組の男達。
すぐに片付けてやろうと思ったのに…


(何コレ…身体が動かない…!)







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