覇出須高校

□怖い話
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それからようやく午後7時を迎えた。

二人はいつもより早めに夕食を終えた。

テレビに集中できるように、マルスは入浴を先に済ませておいた。

マルスはスマホを片手にテレビの前で待機している。

一方で、カイルは台所で皿洗いをしている。

ちなみに、二人の家はアパートで、居間と台所は繋がっている造りになっている。

「お、始まった!」

待ちに待った心霊番組が始まる。

それと同時に、マルスのスマホの着信音が鳴る。

電話に出るマルス。

「マルス、見てる?」

と、スマホからアベルの声が聞こえてくる。

「もちろん!見てる!」

マルスは明るい声で返す。

「あ、ほら。始まったよ」

アベルがそう言うので、テレビ画面に視線を戻す。

テレビでは早速、視聴者から寄せられた心霊映像を流していた。

マルスは通話をスピーカーモードに切り替える。

これでスマホを耳に当てなくても、アベルとの通話が可能だ。

最初の映像は、いかにも出そうな墓場で四人の男女が肝試しをしている。

四人のうち男の一人が、カメラを回して他の三人や墓場の様子を映していた。

「何でわざわざ墓地なんかに、カメラ持ってくかなぁ……」

怪訝そうに呟くアベル。

今のところは何も映り込んだりはしていない。

だが、しばらくは墓場の様子を映していたカメラが、ふと他の三人を映した時だった。

三人の背後から、こちらを睨むように見ている青白い顔をした女がいるではないか。

その途端に男女四人の悲鳴が上がる。

「ひっ!で、出たぁ……」

思わずビクリと肩をすくめたマルス。

「おっかねぇ〜……」

マルスはそう呟く。

「ああいういかにもなオバケ、本当に怖い……」

「それよりもボクは、あんな所にわざわざ肝試しに行く奴らの気が知れない」

アベルの方はそこまで怖がっている様子はなさそうだ。

「墓地で肝試しして、おまけにカメラで撮影なんて、不謹慎だと思うけど」

「それは言えてるかも」

アベルの言葉に何となくマルスは共感する。
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